まさに青天の霹靂である。11日に行われたFC東京との”多摩川クラシコ”(J1 2nd第1節)で試合を決定付ける芸術的な直接FKを沈めた川崎Fのエース、レナトがここにきて中国の広州富力へ移籍することが決定的となった。
クラブへ話が来たのは13日月曜日の昼。中国の移籍ウィンドーが木曜日に閉まるということもあって、かなり”駆け込み”の事態だったようである。「代理人から話があって、本人にも話が来ました。それで、昨日の午後に1回レナトと話をして,今日の練習前にも意思確認をしたら、”(中国で)やりたい”と。なので手続きを進めたという経緯です」と庄子春男強化本部長は14日火曜日の練習後に語った。「当然貴重な戦力。クラブの方からも残って、今年はシーズンを通してやってくれという話はした」(庄子強化本部長) のだが、決定打はやはり本人の意思だったという。契約期間内での移籍ということもありもちろん違約金が発生するのだが、なんと広州富力側は川崎Fが設定した金額を満額で提示。「”これは出せないだろう”という額を設定したのだけど、それを出してきた」と庄子強化本部長も驚きながら語っていた。クラブとしては精一杯慰留に尽力したが、本人の意思や移籍金の額を含め、条件がここまでそろってしまえば引き止めるのも難しかった。
チームで9得点を挙げている10番の流出はこの上なくダメージであり、その痛みはチームの中にも波及している。しかし、「個人であれだけ(相手のDFを)はがせる選手というのはそういないので。ウチが崩し手がなくなったときのレナトのドリブルというのは(相手にとって)すごく怖かったはず。そこがなくなるのは痛いというのがありますけど、逆に、代わりに誰が入ってもうまい具合に出来るのがいまのウチの力。レナトの代わりに入る選手も、自分たちも自信を持ってやりたい」と谷口彰悟はこの急転直下の出来事を精一杯、前向きに捉えている。
「昨日(オファーが)来て、木曜日にウィンドーが閉じるということで。ばたばただった」(庄子強化部長)こともあり、入国時のビザの問題など、障壁は未だ存在する模様。すべての手続きが整ってから、公式でのリリースがあるとのこと。なお、レナト本人は明日、中国へ入る予定。サポーターにとっては最後の挨拶もできぬままのお別れとなるが、これもサッカーの世界ではよくあること。レナトが自ら決断した次の舞台で活躍をすること、そして川崎Fがこれをきっかけに奮起し、明日15日の鳥栖戦で勝ち点3を奪って帰ってくることの2つを、切に願いたい。
(川崎F担当 竹中玲央奈)
2015/07/14 21:00