今週からゲーム形式の練習が増えています。その理由を田坂監督に尋ねると、「11対11は実戦をイメージしやすくリアリティーがある」ということで、いろいろなテーマを持たせたり違う組み合わせを試したりするために、以前からスタッフと話しあっていたのだそうです。裏を返せば、それだけ戦術のベースがしっかり浸透しているということ。残り6試合となり、今季のチームがいよいよ最終段階へと迫っていることを感じます。
今季はまれに見る混戦状態。緊迫した状況が続く中で、さまざまな戦術を凝らす指揮官が多く、流れの中での心理的なものを含めた駆け引きも見応えがあるシーズンです。昇格や降格を争う緊張状態で「前節もスコアが動くたびに選手たちが固まっていた」と苦笑いする田坂監督。「でも、パッと見では内容が乏しく思えるかもしれないけど、勝負に対する執着心は前面に出るだろうし、ずっとJ2を見ている人にとっては緊迫感が感じられるはず」と言う通り、シーズンを通して見続けることの楽しみが極まった2012年ではないかと思います。
エルゴラッソでは毎節のプレビューでフォーメーション予想を行っていますが、理論派戦術家で世界のサッカーの最前線も欠かさずチェックしている田坂監督の動向を見守り、戦術や選手起用を予想するのは楽しい仕事です。どういう練習をしているか、欧州リーグも含め最近はどういう試合をチェックしているか、なにを面白く感じているか。シーズン終盤になると他チームのスタイルも定まってくるため、「田坂監督が対戦相手のスタメンをどう読み、それにどう対策するか」というところまで想像して、時には深読みのあまり頭がカオスになるのもまた醍醐味(だいごみ)。
今節対戦する横浜FCの山口監督も細やかに策を練る指揮官で、時には90分のあいだに数回もシステムを変更することがあります。前節の福岡戦では3バックも登場しました。ピッチにいるとマークのずれなどは感じるけれども、システム変更の全容を瞬時に理解するのはなかなか難しい。大分の前節・町田戦でも先制後に相手がシステムを変え、しばらく押し込まれた時間帯がありました。「相手が戦い方を変えたこと、それによってどういうメリットとデメリットが生じるかを整理してピッチに伝えてやるのがベンチの仕事」と田坂監督が言えば、「試合の中で相手が変化したことを自分たちで感じ取ってピッチで考え、もっと対応できるようにならなくては」と石神直哉選手も言います。それだけ聞いても、かなりエキサイティングなゲームになりそうじゃないですかー。
前回のブロゴラで書いた、10年前の第37節のこと(http://blogola.jp/p/3026)。あの日、鳥栖のゴールを守っていたのはシュナイダー潤之介選手でした。奇しくも今節、横浜FCの守護神として、また昇格争いのさなかに対峙(たいじ)することになろうとは。大分はもう一度、「シュナ潤の壁」を打ち破らなくてはなりません。
(大分担当 ひぐらしひなつ)
2012/10/05 18:53