平成25年度8月5日
全国高等学校総合体育大会男子サッカー準々決勝
「星稜高(石川) 1-5 正智深谷高(埼玉)」
高校総体、通称インターハイの男子サッカー競技は、5日に準々決勝を迎えた。8強の激突を観ようと、灼熱の太陽が照り付ける福岡フットボールセンターに足を運んだ。
第1試合の対戦カードは埼玉の新鋭・正智深谷と、石川の名門・星稜の対戦。五分の攻防が予想された試合は、予想だにしなかった大差のゲームになった。その原動力が正智の背番号10、ナイジェリア系日本人ストライカーのオナイウ阿道にあったことは、間違いない。
「主導権」という言葉の定義は難しいが、序盤のボール支配率で上回っていたのが星稜だったのは確かだ。ただ、サッカーはボール支配を競うスポーツではない。飲水タイム(前後半の合間に各1回設けられる、給水を目的とした1分間の小休止)明けの23分にゲームが動く。正智MF岡部拓実による深い位置からのFKは、蹴った時点ではまったく脅威を感じさせない軌道だった。ファーへと舞った山なりのボールへ星稜GKが飛び出し、手を伸ばす。だが、その手の上に頭があった。僚友たちから“エア・マスター”の称号を贈られているオナイウが、自慢の驚異的跳躍でGKより先にタッチ。先制点を奪い取った。
こうなると、硬さのとれた正智ペースに。33分にはオナイウが巧みな胸トラップで前を向きつつスルーパスを通し、抜け出したFW福井康太が追加点。さらに、ハーフタイムを経て立ち直ろうとした名門に、またもオナイウの脅威が迫る。後半開始直後の38分(35分ハーフ)、CKにオナイウが頭で競り勝ち、このこぼれ球を岡部がプッシュし、3-0と差を広げる。何とか意地を見せる星稜も52分に1点を返すが、この直後の53分、最大のハイライトが待っていた。
主役はやはり、オナイウ。一人目のDFを“裏街道”でかわすと、スライディングで止めに入った二人目のDFも避け、三人目のDFを股抜き。そして最後は右足を振り抜くと弾丸のようなシュートがゴールネットを揺らし、勝負あり。相手の心まで折るような“スーペル・ゴラッソ”。このあと1点を追加した正智が、2度目の出場で4強入りを果たした。
公式記録上のシュート数は星稜3本に対し、23本。「オナイウ個人で取ったような点もあったし、不思議なくらい圧倒できた」と小島時和監督も納得の表情。2得点2アシストのオナイウについては、「やっぱり“ちょっと違う”よね」とニッコリ。未完の大器とも言うべきオナイウには複数のJクラブが関心を示しているが、今大会の活躍でまた一段と評価が上がるかもしれない。「知っている選手が呼ばれているし、こういうところで頑張っていけば」と本人が少しだけ意識しているというU-18日本代表入りも、決して非現実的な目標ではなさそうだ。
(photo: Atsushi Tokumaru)
(EL GOLAZO 川端暁彦)
2013/08/05 19:48