adidas CUP全日本クラブユース選手権(U-18)準々決勝
「サンフレッチェ広島ユース 3-2 愛媛FCユース」
「勝てる試合だった」と断じてしまうと、語弊があるかもしれない。ただ、四国のオレンジ軍団は、この日たしかに優勝候補を向こうに回してなお勝算のある戦いを挑んでいた。
立ち上がりは最悪だった。広島のエース、U-18日本代表FW越智大和にライン裏へと抜け出され、先制ゴールをあっさりと献上してしまう。守備の迂闊な対応を見逃してくれるタレントではなかった。だが、そのあとは素晴らしかった。主将のDF岡田一騎が周囲に声をかけ、折れずに前へ出ていく。ボランチの堀内勇佑がインターセプトから決定機を作り出し、FW清川流石がゴリ押し気味のプレーで相手DFとの駆け引きに競り勝ち始める。主導権は愛媛。「一つひとつのボールに対して真面目にプレーする。その特長を出せました」と青野慎也監督が胸を張ったのもうなずけるプレーぶりだった。そして40分に同点ゴールを奪うと、前半ロスタイムにはMF大森遊音のボレーシュートが相手DFに当たってゴールイン。リードを奪って折り返した。
後半の立ち上がりも、愛媛の出来は悪くなかった。むしろ良かった。CKからの決定機もあった。だが、67分に広島が宮原和也を投入したあたりから雲行きが怪しくなっていった。「疲れはあったと思う」(青野監督)という酷暑の影響に加えて、宮原投入から心理的に前への意識が強まった相手に対し、「気持ちで受けに回ってしまった」(同監督)。78分、その宮原に同点ゴールを許すと、以降は防戦一方。ロスタイムに3点目を許して迎えた敗戦は、ある種の必然を含んだ流れだった。
ただ、終盤の不出来をもって、愛媛の今大会をネガティブに総括する必要はあるまい。個人で言えば、青野監督が「素材としてはすごくいい。ウチで唯一フィジカルでも(全国レベルで)戦える選手でもある」と評するMF清川流石(11番)などは、高い技術と運動能力で随所に存在感を出していた。「精神的にムラがある」ため、今大会はベンチに回されていたが、与えられた出番で奮起。「気持ちに変化が見られた」と青野監督を喜ばせた。本人は恐らく納得していないだろうが、一つのきっかけになる大会だったかもしれない。
プリンスリーグ四国では、ほとんどの試合で主導権を握って押し込む展開になるという。それだけに、逆の展開も多かった今大会の経験は個々の選手にとって財産となるだろう。「負けて悔しい思いをして、泣いている選手もいる。こうやって一勝の重み、1点の重みを感じてくれれば。ここが選手の変わりどころだと思う」。青野監督は、四国の若きオレンジたちが見せた夏の戦いを、そんな言葉で総括した。
(photo: yoichi iwata)
(EL GOLAZO 川端暁彦)
2013/08/01 19:32