上昇思考 幸せを感じるために大切なこと
著:長友佑都
長友佑都と言えば、「世界一のサイドバックになる」という言葉が有名だ。そしてイタリアでの活躍により、その言葉は決して大げさでも誇張でもなくなったと言えるだろう。そんな長友だが、本著ではまた新しい視点を見ることができる。
長友は本著の中で、「最近の僕は、世界一のサイドバックになる過程を通して、自分が人間としてどう成長できるかということが楽しみでしょうがない」と述べており、サッカーをする理由として「人間として成長していくために」という言葉も出てくる。サネッティをはじめとしたインテルのチームメイトと切磋琢磨する中で、「世界一」のさらに向こう側に到達したようにも感じられる。
本著の題名にもなっている「上昇思考」。長友の普段のプレイ、発言からも感じ取れることだが、彼は決して下を向かない。心をくじかれるような出来事もあるだろう。例に挙げられているのは、2011-2012シーズン序盤のインテルだ。結果が出ず、ファンやメディアに叩かれ、街中で厳しい言葉をかけられることも少なくなかったという。インテルほどのビッグクラブがあれほど成績を落とすことは、そうあることではない。当時は本当につらかった、とも長友は明かす。しかし長友は、そういったときでも、いや、だからこそポジティブに考え、前を向く。「こんな経験をできるのは世界中探してもひと握りの人間だけだ」から、最高の経験だ、と。その理由を長友は「『感謝の心』を持っているから」だと言う。自分を支えてくれた人たち、そして今も支えてくれている人たち。そういった人々への恩返しの気持ちを忘れずにいれば、彼らのためにも下を向いてなどいられない、ということだ。
長友は2012年を迎えたとき、3つの目標を立てたという。一つはチームの優勝。二つめに世界一のサイドバックになること。そして三つめが「勇気を持ってプレイすること」だ。長友が大きな挫折を味わった北京オリンピックと、インテル移籍当初の苦しみ。そのどちらも、勇気を持つことができず、ミスを恐れた消極的なプレイになっていたと長友自身は振り返る。その苦しみを抜け出すからこそ成長がある。ネガティブな自分に埋没していたら成長も無いのだ。
「上昇思考」で夢を持つこと。そして小さな積み重ねでその夢へと近付いていくことの大切さを、長友は最後の章で説いている。他の誰でもない、長友の言葉であるからこその重みが、そこにはある。
上昇思考 幸せを感じるために大切なこと
著:長友佑都
単行本:202ページ
出版社:角川書店(角川グループパブリッシング) (2012/5/25)
(BLOGOLA編集部)
2012/08/10 17:11