3月の代表戦で共闘した小川諒也と松原健。同じSBでも異なるスタイルを持つ二人は互いのことをどう見ているのか。エル・ゴラッソとDAZN Jリーグプレビューショーの共同企画インタビューで、マッチアップする際のポイント、試合全体の展望を語ってもらった。
チームを勝たせるプレーを
―現在FC東京はリーグ戦3連敗中です。いまのチーム状況をどう捉えていますか?
「よくないです。ただ、そういうときこそ全員で乗り越えていかないといけません。横浜FMはいま調子がよくて、攻撃力のあるチームなので、しっかり締め直していかないといけないと思います」
―苦しい状況だからこそ、どんなことを意識しているのでしょうか?
「自分や森重選手など日本代表を経験している選手やチームの中心にならないといけない選手がこういう厳しいときにこそ、チームを勝たせられるような、流れを変えられるようなプレーをしたいと思っています」
―今季ここまでの自身のプレーを振り返るとどうですか?
「もっと得点に関わるプレーを増やしたいです。ドリブルで中に切り込んだり中盤の人とパス交換で抜けたり、プレーの幅は昨年と比べても広がったと思います。でも、得点につながっているプレーが少ないので、もっと得点に関わりたいです。もともと攻撃が好きですが、昨年は抑えていたというか、守備がメインになることが多かったです。今年は前に行く動きを意識しています。左サイドの攻撃のバリエーションは増やしたいです」
松原選手の前で点を取りたい
―3月に初めて日本代表に選ばれたことは大きなトピックスだったと思います。
「海外組も合流した中での活動は、本当に楽しい時間で、刺激的な空間でした」
―日本代表に行く前と行ったあとで、何が一番変わりましたか?
「すごく落ち着いてプレーできるようになったと思います。スピード感については代表のほうがあったので、チームに戻ったあとはメンタル的に余裕を持ってプレーできています。前よりも周りが見えていると感じます」
―代表活動直後の試合で「チームを勝たせられる選手になりたい」と話していたことが印象に残っています。
「SBだから守備だけをしていればいいというわけではありません。現代サッカーではSBがゲームを作っていったり、攻撃の起点になったりすることがすごく多いので、しっかりそこで自分がゲームを組み立てられるか。どんどんゴール前に顔を出して、ゴールやアシストに関わっていくプレーを増やしていかないといけないと思っています」
―日本代表でも一緒にプレーした横浜FMの松原健選手にはどんなイメージを持っていますか?
「何でもできるというか、ウィークポイントがあまりない選手だと思っています。あとは横浜FMの戦術もあり、中に入って中盤やボランチの役割ができる選手です。代表で一緒にやってみて、あらためて攻撃を組み立てるのがうまいと思いましたし、SBだから外に開いておくみたいな概念がないというか、参考になるプレーが数多くありました。ライバルという感じはあまりしないですが、対戦するときには絶対にマッチアップする相手です。自分がチームに戻ってから意識してやっている、中に入っていくプレーは松原選手を見ていて影響を受けた部分です」
―代表期間中には話をしましたか?
「モンゴル戦が終わったあとには『もっと中に入ってくることを増やしたらプレーの幅が広がると思うよ』とアドバイスをもらいました。すごくよくしてくれて、サッカー以外のことも含めてけっこう話しました」
―まさに今回はマッチアップすることになりそうですね。
「負けたくない気持ちは強いです。自分は同い年や知り合い、前に一緒にやっていた選手とやり合うときはすごく燃えるタイプです」
―その松原選手をどう抑えるかが、この試合のポイントになりそうです。
「横浜FMはSBが中に入ってくるやり方を採っているので、そこに自分がついていくことは少ないと思いますが、周りを動かして起点を作らせないことはすごく大事になると思います。逆に中に入っているぶん、守備から攻撃に切り替わった際にはスペースが空いてきます。そこをうまく使えれば、松原選手もなかなか上がってこられないと思うので、前線の選手と声をかけてうまく止めながら、反対に空いたスペースをうまく使っていければいい形になると思います」
―FC東京にとって現状から抜け出すために横浜FMは不足のない相手だと思います。
「横浜FMは上位にいて、いい選手もそろっている強いチーム。こういう状況の中で勝てれば、そこからいい流れがくると思います。非常に大事な一戦です。僕自身もここ2試合はシュートチャンスがありながら決め切れていません。そのぶん、この試合では松原選手の前で点を取りたいですね」
取材日:4月25日(日) 聞き手:須賀 大輔
小川 諒也(おがわ・りょうや)
1996年11月24日生まれ、24歳。東京都出身。183cm/78kg。Forza’02→流経大柏高を経て、15年にFC東京に加入。J1通算99試合出場1得点。J3通算53試合出場1得点。
チームを引っ張る存在に
―3月のモンゴル戦での代表初キャップ、おめでとうございます。代表選手となり、ご自身に変化はありましたか。
「心境が変わってきました。ピッチに立って代表のユニフォームを着てプレーすることはやっぱり特別なんだな、とあらためて感じています。モンゴル戦は自分の持っているものを出せましたし、『また選ばれたい』という思いが強まりました」
―左SBの小川諒也選手と非対称のポジショニングを取り、異なるプレースタイルもかみ合うなど、お互いによさを引き出していたように感じました。
「僕も以前は諒也と似たタイプで、常にオーバーラップしてクロスを上げていました。(18年から)F・マリノスでSBが中に絞るサッカーをやり始め、今回代表でも同じプレーができました。諒也はクロスを上げて、僕は中に入ってといいバランスが取れて、相手は的を絞りにくかったはずです」
―22年のW杯に向け酒井宏樹選手を筆頭に室屋成選手、山根視来選手といった選手たちとポジションを争うことになります。
「チームで結果を残さないと、上の舞台にいけないことは重々承知しています。まずはチームでスタメンに定着し、自分のパフォーマンスを出していくことが先決です」
―横浜FMは連戦中、SBはローテーションしています。確実に先発を取ったとなかなか言いにくい状況ではあります。
「コロナ禍で連戦を勝ち抜いていくためにはチーム全体の力が必要です。自分が試合に出たときに100%でやるのは当たり前ですが、出られないときも100%以上の力でやる姿勢がチームにいい影響を与えます。優勝した19年は出られなかった選手誰一人も、文句を言わずひたむきにやっていました。僕もそうならないといけない年齢です。もっとチームを引っ張る存在にならないといけません」
―それを聞いて、ライバルになり得る地元・大分の後輩、岩田智輝選手から移籍の相談をされた際、「おいでよ」と即答した“いい人伝説”を思い出しました。
「正直な話、昔はもっと自分も尖っていたというか、シビアに考えていた部分はありました。智輝は大分トリニータですごい実績を残した選手ですし、実力があるというのは分かっていました。ただ、智輝がオファーをもらった話を聞いたとき、『プロのピッチで智輝と一緒にプレーしてみたい』という気持ちがすぐに出てきました。それが『おいでよ』という言葉に繋がったのだと思います」
見直している攻守のバランス
―では、FC東京戦についてお伺いします。まず代表で共闘した小川選手の印象は?
「一緒に練習していたときから、クロスの質がすごく高いと感じました。空中戦も高さがありますよね」
―マッチアップする場面も多そうですが、抑えるイメージはできていますか。
「まずは左足のコースを切りたいです。でも、そこばかりに注目してしまうとほかにボロが出るので、バランスを見ながらボールを持たせず、相手の長所である左サイドにボールを運ばせないようにしたいと考えています」
―その意味では松原選手のポジショニングも重要になります。今季は絶妙ですよね。
「昨年は得点を取れていましたが、そのぶん失点も多かったです。そこで今季は攻守の『バランスを見直そう』とキャンプでボス(アンジェ・ポステコグルー監督)から言われました。ただ、SBはアグレッシブなポジショニングを取ることがF・マリノスのスタイルでもあります。試行錯誤中ですが、“いくところ”と“いかないところ”のメリハリをつけつつ、いいあんばいを見つけようとしています」
―両指揮官が就任した18年以降、FC東京戦は2勝4敗。必ず決着し、得点が多く入ります。“長谷川トーキョー”のイメージを教えてください。
「しっかりと守備をしてくるチームですね。そして、カウンターが鋭い。自分たちが点を取れば、相手は点を取りに出てこざるを得なくなるので、スペースが生まれ、自分たちのサッカーができるようになります。ただ、先制点を取られると守備ブロックが非常に低くなるので、それをこじ開けるのは簡単ではありません。毎試合、先制点は大事なのですが、FC東京戦はいつも以上に大事になります」
―東京都に緊急事態宣言が発出され、残念ながら今節はリモートマッチになってしまいました。最後に意気込みをお願いします。
「何がなんでも勝点3を取るという強い気持ちを持って臨みます。観客がいないスタジアムは、非常に違和感があります。F・マリノスのサポーターはアウェイにもたくさん応援にきてくれるので残念です。でも、DAZNを見て応援してくれているサポーターの力は確実にチームに届きます。必ず勝利で終われるように全力を尽くします」
取材日:4月26日(月) 聞き手:大林 洋平
松原 健(まつばら・けん)
1993年2月16日生まれ、28歳。大分県出身。180cm/77kg。FC中津→大分U-18→大分→新潟を経て、17年に完全移籍で横浜FMに加入。J1通算152試合出場4得点。J2通算29試合出場。J3通算1試合出場。
『DAZN Jリーグプレビューショー』でも
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※こちらの記事にない話も!
(BLOGOLA編集部)
2021/04/30 13:00