サッカー界で活躍するのは、選手や監督たちだけではない。コーチングスタッフや育成年代指導者はもちろんのこと、運営や広報にグッズ担当、昨今ではデジタルマーケティング担当を置いて力を入れる組織も多い。そうした日々、多岐にわたる役割を果たしているビジネススタッフや指導者たちもまた、一つのクラブを支える大きな存在だ。
現在、サッカー業界に多くの人材を排出する、日本で唯一のサッカー専門総合学校『JAPANサッカーカレッジ』。全国のJクラブにも多彩な卒業生が散らばり活躍する。今回、そんなOB・OGの皆さんに登場していただき、サッカークラブで働く現在と、在学時代に学んだ経験を語っていただいた。
〈インタビュー・文: 郡司 聡〉
在学時代に培った経験が、いまの原動力
――萩原さんはJAPANサッカーカレッジ(以下、JSC)入学が2013年とのことですが、まず入学の動機から聞かせてください。
萩原 サッカークラブで働きたいと思うようになったきっかけは、2005年に味の素スタジアムで行われた東京ヴェルディvsレアル・マドリードのプレシーズンマッチを見に行ったことです。実はその試合が私にとって、人生初となるサッカー観戦だったのですが、そのときにグラウンドレベルにいたスーツ姿の方々を見て、純粋にカッコいいなと思い始め、サッカークラブで働くことに憧れました。そして高校卒業のタイミングでサッカー雑誌に載っていたJAPANサッカーカレッジの広告を見て、入学を考え始め、新潟に行く決心を固めました。
――JSCでの2年間は、どんなことを学んだのですか。
萩原 北信越フットボールリーグに所属しているJSCの運営、広報、営業全般業務、アルビレックス新潟の試合運営の実務実習が一つ。そのほかにはビジネスマナーやパソコンの基本的なスキルが身に付く授業も受けてきました。時には地域のお祭りにブースを出店して、ホームタウン活動にも取り組んできました。
――いわゆる“キャンパスライフ”はいかがでしたか。
萩原 正直、実習に追われる日々でしたが(苦笑)、JSCは集中した環境で実習や講義に取り組むことができます。また同期のほとんどが学校周辺に住んでいたため、学校が終わったあとの食事の時間や、同期と過ごす日々も印象に残っています。
――学校で学んだことで、のちのちに活きていることはありますか。
萩原 例えば、北信越リーグの運営やアルビレックス新潟での実習を通じて、試合日の一連の流れが体に染み付いていることが一つ。ほかには、3〜4日間、泊まり込みで小学生のサッカー大会の運営に携わった時のことです。ひたすらテントを建てる作業をしたのですが、その経験は町田のホームゲームの運営でもいきましたね。慣れない人よりもテキパキとスピード感を持ってテントを建てることには自信があります。もちろん、テントの撤収作業も自信がありますよ(笑)。また、そこでは泊まり込みの実習だったため横のつながりが深まりました。さらに試合の空き時間にはキックターゲットなどのイベントをやったのですが、実践レベルで子どもたちとの接し方を学べたことが、町田のファン・サポーターの子どもたちと接する上でも、大いに役立ちました。
地元クラブで過ごす、充実の日々
――今年で入社7年目とのことですが、町田に入社した経緯は?
萩原 最終的には地元のクラブであるFC町田ゼルビアで働きたいと思っている中、2014年に人の繋がりがきっかけとなり、インターンシップという形で、町田にはお世話になりました。そして卒業のタイミングでちょうど、クラブスタッフの方が1名退社されることもあり、大変ありがたいことに入社のオファーをいただきました。
――現在はどんなお仕事をされていますか。また仕事をする上でのモチベーションも聞かせてください。
萩原 マーケティング部に所属し、主にグッズの制作から販売を担当しています。グッズを担当していて良かったなと思うことは、その商品が売れるのはもちろんですが、実際に買っていただいたファン・サポーターの方々から、ダイレクトな反響をいただくことです。そうした反響の声はすごく励みになります。試合会場で直接「あのグッズ、良かったよ」と声を掛けていただいたことや、昨年の冬の時期には、『なりきりゼルビー』というマスコット型の帽子について、「冬の試合には暖かくて重宝しました!」と声を掛けてくださったことがうれしかったです。
――萩原さんが発案した一番の“会心グッズ”は何ですか。
萩原 いろいろな方々の助言もあって実現した選手の名前をプリントした『プレイヤーズフェイスタオル』がすごく好評でした。ファン・サポーターの方々に掲げていただくと、選手たちの目線からでもハッキリと見えるようですね。選手たちにも評判が良くて、「モチベーションになりました!」と言っていただけたときにはすごくうれしかったです。
今季新加入の長谷川アーリアジャスールが手にする、萩原さん発案のタオルグッズ
――文字が漢字であったことも“スタジアム映え”した要因ですよね。選手に取材をしていても、モチベーションにつながったという声はよく耳にしました。
萩原 昨年は声に出して応援できない分も、何かしらビジュアルで選手の力になれればと思っていました。そのほかのグッズで昨年好評だったのは、選手の背番号入り『ステンレスサーモタンブラー』。受注販売でしたが、選手にも気に入っていただいて、実際に購入する選手もいたぐらいです。
再びスタジアムが満員になる、あの光景を実現させたい
――今後の個人的な目標を聞かせてください。
萩原 私が入社した後も、地元のクラブであるFC町田ゼルビアは、クラブの規模感がどんどん大きくなっています。今年はホームの町田GIONスタジアムがJ1基準の収容人数のスタジアムに拡張し、さらに待望のクラブハウス、専用の練習場も完成します。近い将来、J1に昇格する日も来ると思いますが、青一色に染まるスタジアムが日常になるための力になりたいと思っています。野津田のスタンドがファン・サポーターの方々で埋め尽くされる。それが選手たちの力にもなりますから。
――ちなみに過去のホームゲームで印象に残っている試合は?
萩原 J2に復帰した初年度である2016年の開幕戦セレッソ大阪戦や、15年のJ2・J3入れ替え戦での大分トリニータ戦、そしてJ2優勝の可能性があった18年の最終節・東京ヴェルディ戦…。満員で埋め尽くされた野津田のスタンドは忘れられません。たくさんのお客様にお越しいただいたことにより、てんやわんやでしたが、あの光景が日常となる日が来るように、自分の持てる力を尽くして、頑張りたいです。
――今後サッカー業界に進もうと考えている方々へ、メッセージをお願い致します。
萩原 いま振り返っても、実践で学ぶことは、本当に大事だなと思います。その点で言えば、JSCでは北信越リーグやアルビレックス新潟、レディースなどで試合運営を学ぶことができます。また何よりも、JSCではパソコンのスキルも学べるので、「学生の時にやっておいて本当に良かった」とあらためて痛感しています。パワーポイントでポップを作ることなど、基本的なパスコンのスキルは、磨けるだけ磨いておくことに越したことはありません。そしてJSCは実習が中心なので、吸収する能力も身につきます。積極的に周囲とのコミュニケーションを取ることや、待ちの姿勢ではなく、積極的な行動を心掛けた上で、自ら仕事を探し出すことが、将来に向けた礎になりますから。
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選手・コーチ・トレーナー・クラブスタッフなど、サッカー界のあらゆる分野を目指せる日本で唯一のサッカー総合専門学校。
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(BLOGOLA編集部)
2021/02/27 08:00