今季8つ目のゴールを決めたあとに見せた歓喜の表情は、今季一番はじけていたかもしれない。
前節の湘南戦で決勝ゴールを決めた石津は、持ち味であるドリブル突破からのゴールを「シュートコースは見えていたけど、普通には打てない状況だったので、スライディングしながら打った。もう無我夢中だった」と振り返った。
ゴールを決めるために『無』の状態になれたのは、メンタルの状態が整っていたから。その理由の一つがスタジアムの雰囲気。今季最多となる16,336人の観客が作り出した雰囲気が、石津の集中力を高めた。
そしてもう一つは、石津自身がしっかりと心を整えていたから。今季、大きな期待を背負って神戸から福岡に復帰した石津は、開幕から11試合連続で先発出場。しかし、第12節以降はベンチスタートに。この状況に悔しさをにじませながら、井原監督から課題として指摘された守備面で何とか役割を果たそうと努め、「でも自分の持ち味は攻撃にあるのに」という葛藤の中でもがき続けた。
石津がここまで挙げた8ゴールのうち6ールは途中出場で挙げたもの。周囲はスーパーサブとしての働きを評価したが、それでも石津自身は先発にこだわってきた。そんな態度に変化が見えてきたのは、リーグ終盤になってから。特に4位に落ちて臨むラスト3試合を前にしてついに、「いまの状況で一番大事なのは一丸になること。そのために自分も、与えられた時間の中で結果を残すことに集中しようと考えるようになった」と口にした。
湘南戦ではその気持ちの変化を如実に示すかのような素晴らしいゴールを挙げて、石津は歓喜の輪の中心にいた。そのことであらためて思いを強くした様子で、今節・松本戦前の囲み取材の最後に口にしたのも「与えられた時間で結果を残すだけ」という言葉だった。
写真:島田徹
(福岡担当 島田徹)
2017/11/08 19:36