勝手なイメージで見てすいません――。思わず心の中で頭を下げたのは、DF岩下敬輔に若手へのアドバイスについて話を聞いているときだった。
岩下が若手選手にアドバイスを送る姿は、練習でも試合中でもよく見る光景だが、彼自身の見た目の印象や日ごろの強気なコメントから「違う、そうじゃないんだよ」「いいからオレの言うことを聞けって」というような、有無を言わさぬトップダウン的なアドバスが多いのだろうと勝手に想像していた。だが、実際のところは違うのだった。
「いろいろなアドバイスは送る。でも、それを聞くかどうか、あるいは自分に必要かそうでないかは本人の判断次第。自分は選択肢としての情報を与えているに過ぎない」
“トップダウン式”というよりもむしろ、いまの育成指導の現場で注目を集める選手の判断力養成を主眼に置いた“ボトムアップ式指導”に近い考え方。このあたりのスタンスは、岩下が清水に在籍していた若手のときの中軸選手だった森岡隆三氏(現・鳥取監督)や齊藤俊秀氏(現・U-17日本代表コーチ)から学び取ったものらしい。
また、岩下が与える情報やアドバイスが人によって異なるという点にも驚く。例えばCBとしてコンビを組むDF冨安健洋に対するアドバイスについては、こんなふうに言う。
「普通のレベルの選手だったら『コースを限定したほうが良い』というようなセーフティーなプレーを要求するところを、トミ(冨安)にはもうワンランク上の要求、例えば『むしろ、そこは飛び込んでいけ』と言ったりする」
寄せて奪う力がある、あるいはかわされてもすぐにリカバリーできる力を冨安は持っていると理解した上での、さらなる成長を促すアドバイス。それも練習後、自分の体をストレッチしながら居残り練習に励む若手をじっくり観察しているからこそ可能なもの。
やはり、岩下には『兄貴』という呼び名がふさわしい。
(福岡担当 島田徹)
2017/08/09 18:03