著者:風間 八宏(かざま・やひろ)
発行:4月21日/出版社:双葉社/価格:1,300円(本体価格)/ページ:224P
日本サッカー界の特異点、風間流『49』のマネジメント術
革新的な超攻撃サッカーで、川崎FをJリーグ屈指の強豪チームに押し上げた現・名古屋監督の風間八宏氏。本書には彼が川崎Fを率いた際のマネジメント術が『49』の項目に分けられ、端的に書き記されている。
「守備のことは考えなくていい」。風間氏が川崎Fの監督に就任し、最初に選手たちに語ったこの言葉からすべてが始まる。そして彼はそれまでの常識や習慣というものにクサビを打ちこんでいった。その根幹にあるのがタイトルにもなっている“個”の概念である。選手を戦術に合わせるのではなく、選手の個性を生かし、その力を組み合わせ、積み重ねていくことで戦術とする。とかくシステムや戦術論が語られるサッカー界で、個に特化したチーム作りは特異と言える。
本書内でこんなエピソードが紹介されている。川崎Fの監督に就任した当時、チーム内で誰もが認める選手だった中村憲剛のプレーを見て、風間氏はかつての自分をダブらせていたという。それはチームを優先させるあまり、自分の100%の力を出していないということ。出せば周りがついてこられず、かえってチームはうまく回らなくなってしまう。風間氏も選手時代、そうしたプレーを強いられていた。そこに疑問を持っていた彼は、次の言葉をかけ中村のリミッターを外した。
「チームのことなんて考えなくていい」
チームのトッププレーヤーである中村が100%の力を出せるチームを作る。それは在籍するほかの選手の技術を伸ばすことなしには成し遂げられない。そのために風間氏は、あえて中村にミリ単位の技術を求めた。チームの中で突出した個の力を持つ中村を伸ばせば、全員の技術が高いレベルに自然に引き上げられるに違いないと考えた。
徹底的に個を伸ばす風間氏の考え方やノウハウは、スポーツだけでなくビジネスの世界にも通用するものだと思う。個人が100%の力を出せば会社の利益に直結し、組織の中に埋没させていたら、個人の、そして会社の成長につながらない。上司がいかに部下の“やる気”を引き出すか、風間流のマネジメント術は、部下の指導に悩むビジネスリーダーにも大いに参考となるはずだ。
文:斎藤 孝一(エルゴラッソ名古屋担当)
(BLOGOLA編集部)
2017/08/13 12:00