著者:ヘスス スアレス(JESUS・SUAREZ)/小宮 良之(こみや・よしゆき)
発行:3月23日/出版社:東邦出版/価格:1,500円(本体価格)/ページ:224P
二つの意味で“挑戦的”。媚びない姿勢と形而上学的な眼差し
ヘスス・スアレス氏と小宮良之氏による共著、『挑戦状』シリーズの第6弾。スアレス氏の論はその名のとおり“挑戦的”で清々しいほど実直だ。批評の対象は昨今のフットボール界を彩る主役たちだが、そんな男たちにもまったく容赦がない。
例えば、レアル・マドリー監督のジネディーヌ・ジダン。コロンビア代表MFハメス・ロドリゲスとスペイン代表MFイスコの二人を主力として計算しない姿勢を「フットボールに目を背けている」と断罪する。フランス代表MFポール・ポグバに至っては、スペイン代表MFアンドレス・イニエスタと比較する形で、「少しのインテリジェンスも感じない」と一刀両断。「語る価値もない」と突き放す。
これらの言葉を目にしたとき、中には嫌悪感を抱く人もいるかもしれない。しかし、その反応自体は至極自然なもので、著者二人もそんなことは織り込み済みだろう。小宮氏がプロローグで言及しているように、そもそも本書は「正解を提示しているわけでない」のだから。サッカーは多様だから面白く、底が知れない。ならば、サッカーに関する言説もそうあるべきだ。スアレス氏の刺激的な言葉の端々からはそんな思いが透けて見える。「さぁ、自由にプレーしろ(語れ)」。メッセージが込められた鋭いクサビのパスが、ページをめくるたび、われわれ読者の脳裏に強く打ち込まれる。
と、ここまで書いてきたことは本書の一つの側面に過ぎない。なぜなら、本書は“媚びない”という意味においてのみ“挑戦的”なわけではないからだ。スアレス氏はさまざま事象を根本から問いただそうとする。アルゼンチン代表FWリオネル・メッシとは何者なのか。イニエスタはなぜ世界最高なのか。マルセロ・ビエルサのチームはなぜ魅力的に映るのか。それらの問いに対して導き出されるスアレス氏の解答は、実に含蓄に富んでいる。それらサッカーに向けられた形而上学的な眼差しはまさに“挑戦的”と言えるだろう。システムとは。監督とは。そもそもサッカーとは――。本書にはそんなことを考える契機が散りばめられている。一見、選手や監督への“挑戦状”に映るが、これはわれわれ読者に向けられた“挑戦状”でもあるのだ。
(BLOGOLA編集部)
2017/06/11 12:00