昨季まで横浜FCに在籍し、北朝鮮代表でもチームメートだった大先輩アン・ヨンハの現役引退を、リ・ハンジェはアン・ヨンハの公式ブログでの発表前に、彼からのLINEメッセージで知った。昨季、町田がJ2に復帰した折、最もJ2リーグで対戦したい選手に同胞のアン・ヨンハを挙げていたため、その思いが叶わなかったことに少なからずショックを受けた。
「今季の所属チームを探していると聞いていましたし、もしかしたら現役引退があるかもしれない……とは思っていました。燃え尽きることのない情熱を持った方で、僕もそれに引っ張られるように『負けられない』、『あの人に追い付きたい』とやってきました。引退を聞いたときは心の中に穴が開いた気がしました。僕のこの情熱が消えてしまうことが怖いなとも思っていました」
北朝鮮代表でともにプレーしていた当時、最も印象に残っているゲームは2006年ドイツW杯最終予選、埼玉スタジアム2002での日本代表戦。アン・ヨンハはボランチで、リ・ハンジェは右サイドハーフのポジションでプレーし、試合終盤にリ・ハンジェが交代した矢先に決勝点を奪われた。「僕が交代したあとに点を入れられた。もう涙が止まりませんでした」。
いまでは在日の選手が北朝鮮代表に入ることは珍しくないが、アン・ヨンハが先駆者となってその道を切り開いてきたとリ・ハンジェは当時を振り返る。
今節は、アン・ヨンハが現役最後にプレーしていたチーム・横浜FCと対戦する。その横浜FC戦を前に、リ・ハンジェの胸にはアン・ヨンハからのメッセージが去来している。
「今でももちろんそうだけど、在日の選手のためにも、後世にバトンタッチしていくためにも、ハンジェには1年でも長く現役を続けてほしい。だから、けがだけには気を付けて」
J2の舞台で対戦する。その願いは叶わなかった。だが、スパイクを脱いだ大先輩から託されたものがある。
「ヨンハさんの魂を受け継いで、ヨンハさんのぶんまで、長く現役を続けたい」
今年で35歳を迎える町田の闘将は、新たな決意を胸に、横浜FC戦のピッチに立つ。
写真:郡司聡
(町田担当 郡司聡)
2017/04/14 17:48