2011年3月11日の東日本大震災後、いまに至るまで復興のシンボルとして戦い続けるベガルタ仙台。2月23日に発売したEG BOOKS『在る光 ~3.11からのベガルタ仙台~』はチームを密着取材してきたエルゴラッソの番記者が、その語り継ぐべき物語を綴ったものだ。
震災6年目の3月11日、ベガルタ仙台はホームのユアテックスタジアムで神戸を戦い、敗れた。だが、大切なのは1試合の結果ではない。
2017年3月11日。東日本大震災の発生から6年が経過したこの日に、ユアテックスタジアム仙台で明治安田J1第3節・仙台−神戸が開催された。
ホームで、何としても勝ちたいこの一戦。しかし、0-2と今季初の黒星を喫した。
「特別な試合に勝てなかったことが、“発信するべき立場”として非常に申し訳なく思います」
6年前に被災経験を持つ富田晋伍主将は、サッカーを通じてこの被災地の現状や復興への意志を“発信するべき立場”としての責任を口にした。
しかし、当然のことながら、ここで歩みを止めるわけにはいかない。リーグ戦も、復興への道も、続く。
「1日だけで何かが報われるとは思いませんし、今日のゲームがダメだったからもう仙台がダメなんだとは思ってほしくない」
試合後の記者会見で、渡邉晋監督は今後に向けた思いを口にした。
3月11日は大事な日付だが、震災も復興も、3月11日で完結するのではない。大事なのはむしろ、3月11日の後にどう意識し、どう行動するかだ。
この神戸戦の当日には、両チームのホームタウンだけでなく、東京からも多くのメディアが集まった。対戦相手が阪神・淡路大震災からの復興のシンボルである神戸だったこともあり、第三者メディアにも関心の高いカードだった。しかし、この3月11日の後も、その関心はどれくらい続くだろうか。メディアだけでなく、3月11日を過ぎれば、サッカーを離れても、防災や復興への意識をどれほど多くの人が持ち続けられるだろうか。
「仙台での使命は、これからもずっと続いていきます。今日の結果は残念ですが、これから先にもっと勝つ姿をサポーターに見せることが大事です」とリャン・ヨンギは前を向いた。3月11日が過ぎても、あるいは3月11日を過ぎたからこそ、このクラブはホームタウンとともに在り続ける中で、果たすべきことがある。
敗戦から一夜が明け、渡邉監督はチーム全員に呼びかけた。
「3月11日に、悔しい敗戦を喫した。しかし、その3月11日に負けたところからどのように立ち上がる力を示せるのか、ということが、復興のシンボルになることにつながるんだ」
このホームタウンにとってのさらに強い光となるために、仙台の挑戦は続く。
あれから6年――時が経ち、選手が入れ替わっても、
このクラブが背負う使命は変わらない。
『在る光』
3.11からのベガルタ仙台
著者:板垣晴朗
定価:本体1,600円+税 判型:四六判 頁数:272頁
2月23日発売
ISBN 978-4-908324-19-2
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(仙台担当 板垣晴朗)
2017/03/17 07:00