甲府の一次キャンプ(静岡市清水区・J-step)の恒例行事である乳酸と酸欠に打ち勝つ自分との戦いが1月16日に繰り広げられた。持久力や回復力を測定するVMA(有酸素性最大スピード)測定といわれるもので、1本目は125mを45秒で走り、15秒間のインタバールを置いて6.25mプラスした距離を走る。その距離を45秒で走り切れたら、次はさらに6.25mプラス。これを繰り返し、45秒を越えてしまうと、次のステップには進めなくなってしまう。
1本目(125m)は時速にすると10kmなので楽勝でも、10本目(距離は187.5m)は時速15km、20本目(250m)は時速20kmで走らないと45秒で到達できない。ウサイン・ボルトが100mで世界記録を出すときは時速約37kmだが、スポーツクラブのトレッドミルで時速20kmを設定すれば、モーターが大きな音を出して大騒ぎになるすごいスピード。自動車のアクセルを軽く踏んで出す時速20kmと、己の体だけで出す時速20kmは労力がまったく違う。1本ごとに真綿で首を締めるように取り込める酸素の量は減っていき、筋肉を硬くする乳酸はどんどん溜まっていく。
ベテラン組(土屋、石原、津田、兵働、松橋、保坂、河田)、中堅組+チーム・ブラジル(田中、黒木、島川、岡、リマ、ウィルソン、ガブリエル)、セミ中堅組(堀米、橋爪、新里、畑尾、河本、岡西)、若手組(熊谷、森、若杉、曽根田、小出、道渕)の4つのグループに分けて行われたテスト。ベテラン組は21本目を「気持ちで走った」兵働昭弘がトップ、中堅組は島川俊郎が21本3/4でトップと、二つのカテゴリーで新加入選手がトップを取った。青山直晃(ムアントン・ユナイテッド)が加入したときもカテゴリートップで、新加入の選手は結構頑張る傾向にある。セミ中堅組では先頭が何度も入れ替わった末に、22本目で堀米勇輝を振り切った新里亮が22本3/4で1位。
チームトップとなったのは若手組の19歳・森晃太。1本目から死んだフリで後方を走っていた森は22本目(262.5m)で、熊谷駿を振り切り、23本目まで突入(最後は3/5でリタイヤ)。ただし、昨年24本1/2を走り切った稲垣祥(今季、広島に移籍)は抜けず、その記録が引き立つ結果でもあった。
森は「去年は(高校卒業前だったので)学校のテストがあって、(このVMAを)やっていませんでした。自信はあったんですが、隠していました。最初は後ろで走って精神的に有利な状態を保っていたので作戦勝ちです」と賢さと持久力をアピール。この計測値がサッカーに直結するわけではないが、計測を最初から最後まで少し距離置いて見つめていた吉田達磨監督は「一つの指標として捉える」と話した。良い結果を出せた選手は少なくとも心意気を監督、コーチングスタッフに示すことはできたはずだ。
(甲府担当 マツオジュン)
2017/01/16 18:33