1998年、東福岡高校を卒業後、名門・鹿島アントラーズのクラブハウスの門をくぐってきた低姿勢の高校生を見た相馬直樹選手の“ファースト・インプレッション”は、意外性に満ちていた。
「ずいぶんと謙虚だな」
インターハイ、全日本ユース選手権、高校選手権を制覇し、いわゆる前人未到の“高校三冠”を達成した東福岡ではエースNo.10を着けるなど、当時は鳴り物入りでの鹿島加入だった。同期には小笠原満男、中田浩二、曽ケ端準ら、のちの鹿島の黄金期を支える面々が顔をそろえている。しかし、本山雅志は周囲の喧騒をよそに、天狗になっていてもおかしくはない状況下でも、常に謙虚だったという。
「おはようございまーす!」と甲高い声で挨拶をしながら、そうそうたる先輩たちの前で頭を下げる。「この謙虚さは親御さんの教育の賜物かもしれないな」。相馬直樹はそう思っていたという。
ひとたびピッチに立てば、本山のドリブルに目を奪われた。
「ドリブルは明らかに違うものがあった。スピードが上がったときでも体の状態はブレないし、その中で顔を上げられる。ドリブルでの動きがすごくスムーズだった」
そして外見は謙虚さの塊でも、内面は“負けず嫌い”。それが相馬直樹というフィルターを通した“本山雅志像”である。
あれから18年。今節の北九州戦では、指揮官・相馬直樹として、一人のベテランプレーヤー・本山雅志と向き合うことになった。
「ボールを落ち着かせるところや気の利いたプレーは健在だし、最前線でドリブルで切り込んでというプレーはそれほど多くないけど、北九州さんが苦しい状況の中で、精神的にも頼られる存在として、チームの顔として、君臨していると思う。彼の経験値を出させないようにしないといけない」
立場の変わった二人が“再会”する今節・北九州戦。本山の先発出場は不透明な情勢だが、町田の指揮官は、“本山封じ”を試合のポイントの一つとして捉えている。
(町田担当 郡司聡)
2016/11/05 13:58