磨き抜かれて円熟味を増しゆく左足から放たれる、やわらかにして切れ味鋭い軌道はまさに職人技。苦境のチームに数々の得点機をもたらしてきた兵働昭弘は、現在、明治安田J2アシスト数ランキング1位タイをキープしている。
高精度キックの秘密を訊くと「空気穴を上にしてボールをセットすること」と明かし、「そうするとカーブがかかりやすいんで」と付け加えた。
「まさか、流体力学的に!? そんな繊細な!」と色めき立つと、「嘘です。ただの自分なりのルーティンです」と笑っていなされた。FKでもCKでも、そして機会は少ないがPKでも同様に置くという。
ただ、この秘策にはひとつだけ弱点があった。「なかなか穴が見つからないときは大変です」。セットに時間がかかっているときは必死で穴を探しているときだ。
職人は6日のFK練習でも何度もネットを揺らしたが、終了後には首をひねって歩きながら何度も足を確認していた。「もっと高くから落ちるほうがいいかなと思って」と、さらに精度に磨きをかける。
(大分担当 ひぐらしひなつ)
2015/11/06 17:27