20日に行われた緊急の記者会見の様子。左から湯田一弘強化・育成部長兼アカデミーダイレクター、水沼富美男代表取締役社長、上野佳昭ゼネラルマネージャー。
20日午後、栃木は緊急の記者会見を開き、阪倉裕二監督の辞任を発表した。水沼富美男社長によると19日に阪倉監督から湯田一弘強化・育成部長兼アカデミーダイレクターに辞任の申し出があり、クラブ内で議論した結果、承認された。チームは今季ここまで24節を終了した時点で5勝8分11敗、20位と低迷。一度も連勝を記録しておらず、4試合勝ち星なしで迎えた18日の明治安田J2第24節・群馬戦にも0対1で敗れていた。
湯田氏の説明によると、2連敗となった群馬戦の試合後、チームバスに乗り込む際に阪倉監督から「選手たちは自信を失っているように見えますか?」と問われ、湯田氏が「私は自信を失っていると思う」と返すと「やはり、そうですか……」と深刻な表情を浮かべて肩を落としていたという。その後、一夜明けた19日に阪倉監督から辞任の申し出があり、クラブは慰留せずに承認、20日の午前中の練習前には選手たちにも経緯が伝えられた。この日の練習は上野優作ヘッドコーチを中心に進められ、すでに阪倉監督の姿はなかった。
水沼社長は阪倉監督の辞任の申し出を慰留しなかった理由について「阪倉監督のサッカーは形になりつつあったが、明確には発揮できず、結果も振るわなかった」とし、阪倉監督からは「精一杯やっているが結果が伴わないことに責任を感じている。今後何としてでも栃木がJ2に残るためにも、ここで結果責任を負って辞任したい」と伝えられたことを明かした上で 「フロントとしては、このままでは負のスパイラルから抜け出せないと感じていたが、それは阪倉監督も同じ感覚にあったと思う。阪倉監督の意志と、我々フロントの考えが一致していた。(阪倉監督の辞任の申し出は)突然の出来事ではあったが、状況を鑑みて苦渋の決断で承認した」と説明した。
阪倉監督は、トップチームコーチやユースの監督を含めると計7年6カ月もの間、栃木に尽力。昨年からはトップチームの監督として、クラブが債務超過に苦しむなど十分な資金がないなかでやりくりし、選手を育てながら結果を出すべく試行錯誤したが力及ばず、チームを去ることとなった。選手には”熱血漢”と慕われる存在だった。
なお、クラブはすぐに後任選びの作業に入り、20日15時に行われた記者会見までに候補者を、上野優作ヘッドコーチ、森下申一GKコーチを含むクラブ内外の5名に絞って交渉を開始。そのうち「この状況に近い経験値を持っている監督経験者」(湯田氏)という候補者1名とはすでに交渉が最終段階に入っており、話がまとまれば21日中に発表できる段階にあるという。
湯田氏は現在のチームを取り巻く状況について「我々が思っている以上に他チームには分析されている。(直近の)群馬戦の失点もCKのエアポケットでの失点。(第21節)水戸戦(1●2)の後半の2失点も分析された結果だ」とし、「現状のチームは攻撃で得点が取れないのか、守備が悪いのか、色々と見方があると思うが、いまやるべきは守備の再構築」として、新監督には「現状のベースを引き継ぎながらも、ゴールを奪うための積極的な守備ができ、いい守備からいい攻撃を発揮できること」「選手たちが自信を失いかけている今、我々と一緒に戦いながらこれまでのベースのディテールを突き詰めて積み重ねられる」ように求めながらサポートするという。
新監督には22日にホームで迎える第25節・讃岐戦から指揮を執ってもらうべく、まさに今夜と明日でその段取りが急ピッチで進む。栃木は新監督の下、今季の残り18試合でJ2残留を確実なものとしつつ、上位浮上を狙う。
(栃木担当 鈴木康浩)
2015/07/20 21:06