[PHOTO:Atsushi Tokumaru]
本田圭佑の助言
そして、武藤にはもう一つ、大切にしている考えがある。
「孤独と戦うことも、大切」
これは、日本代表でともにプレーして以降、武藤の良き先輩として存在してきた本田圭佑から告げられた言葉である。そのセリフには、実はこういう意味も含まれていた。
「圭佑くんはいま、厳しい状況の中でもイタリアのミランで戦っている。圭佑くんがこう言っていた。『海外に行きたいのであれば、あえて孤独と戦うことも必要。例えばいまドイツに行っても、日本人選手はたくさんいるし、活躍しても大きく評価されないかもしれない。それならもっと違う国や環境で勝負するべきだ』と。その言葉が自分の中ですごく印象に残っている」
勝負を挑むのであれば、ビッグクラブほどやりがいのある環境はない。もちろんそこにはリスクもある。日本からいきなり欧州トップレベルのクラブに行き、苦虫を噛みつぶした選手は過去にも現在にもいる。あとは、武藤がどのような判断を下すか。ただひとつ言えるのは、彼の中でこの本田の言葉は、かなり大きな意味を持っていることである。
チェルシー以外にも、イタリアの名門など、複数のクラブからオファーや獲得打診を受けている。そんな状況でも、当面の自分の仕事を一時も忘れてはいない。「いまは本当にFC東京の試合に集中したい。このクラブでJ1・1stステージのタイトルを獲ることに貢献したい。それだけは変わらない目標なのは間違いない」。青赤育ちの若きエースに、プロ入り2年目にしていきなり転機が訪れようとしている。周りが激変し注目度も上昇する中、とにかく冷静な自分を保とうと苦しみながらも、胸を張る。武藤嘉紀、22歳。その決断がどんなモノになるのか。結果がどうであれ、最終的に彼が自分の決断に胸を張ることは間違いない。(西川 結城)
(FC東京担当 西川結城)
2015/04/11 21:34