国際Aマッチデーの週を終えて、代表戦士たちは所属クラブに戻る。そして、今週末には各国でリーグ戦が再開する。日本代表戦を終えてイングランドに戻った吉田麻也のクラブにおける立ち位置であらためて浮き彫りになったイングランドで戦い続けることの難しさとは̶̶。
日本代表・ベネズエラ戦の翌朝、羽田空港。国際線ターミナルに、吉田麻也が慌ただしく姿を現した。白いTシャツを着た長身に、駆け寄る女性ファンたち。急いでチェックインを済ませると、集まった人たちに笑顔で振り返り、機上の人となった。今回、新生アギーレジャパンの初陣に、吉田はザックジャパンに引き続いて招集された。新たなメキシコ人指揮官は、チームの中心人物として本田圭佑、川島永嗣、そして吉田を指名した。キャプテンマークはウルグアイ戦、ベネズエラ戦ともに本田が巻いたが、まだ正式な主将は決まっていないという。
「キャプテンを任されても任されなくても、僕の役割は変わらない。CBというポジションはチームの後方から選手全員にしっかり指示を出していかないといけない責任がありますから」
いまから2年前、ロンドン五輪代表にオーバーエージ枠で加わり主将を務めた際も、同じような言葉を残していた。あれから代表の舞台で、そしてプレミアリーグの舞台で、酸いも甘いも経験してきた。選手としての器は、確実に広がりを見せる。だからこそ、新生日本代表でも、この男は最終ラインの統率者として欠かせない存在となり得るだろう。吉田にとって、鍛錬の場は代表の舞台だけではない。いやむしろ、彼の日常には、代表戦以上のレベルとステータスに満ちた戦いが存在する。プレミアリーグ3年目のシーズン。1年目の安定、2年目の挫折を経て、迎えた今季。吉田は試合に出続けることを、念頭に置く。
昨季、吉田からポジションを奪ったクロアチア代表DFデヤン・ロブレンは、リバプールへと移った。よって今季の吉田は、先発の座に返り咲いている。開幕戦のリバプールとのアウェイゲームは、接戦の末に1-2で敗れたが、その後はウェストブロミッチに引き分け、ウェストハムには勝利。吉田も相方のジョゼ・フォンテとCBコンビを組み、3試合連続でフル出場を果たしている。「常に危機感と隣り合わせです」と本人はもちろん気を緩めていないが、シーズンの入り方は決して悪くはないと言っていい。
ところが ここに来て、再び雲行きは怪しくなりつつある。サウザンプトンはCBの位置に立て続けに補強を敢行。ルーマニア代表のフローリン・ガルドシュを獲得し、さらに移籍市場が閉まる直前には、昨季のチャンピオンズリーグ準優勝のアトレチコ・マドリーからベルギー代表のトビー・アルデルバイレルトが加わった。特にアルデルバイレルトは即戦力級の実力の持ち主。吉田のポジションを直接脅かす存在である。こうした動きに対して、吉田は前述のとおり自身への危機感を保ちつつも、覚悟を決めている。
「(ロナルド)クーマン監督は、どこかで必ず新戦力を試すと思う。そうでないと、何億もかけて獲得するわけがない。でも、まだ僕が試合に出ている立場。だからとにかく、いまは自分の信頼感を築き上げていくしかない」
いまはまだ、自分がCBの一角を担っている。開幕3試合のチームパフォーマンスも悪くはない。この流れを切らすことなく、吉田はここからもただひたすら一戦、一戦に集中するのみである。13日に迫った第4節・ニューカッスル戦。10日朝、笑顔で離日した吉田だが、ロンドン・ヒースロー空港に降り立った彼の表情は、再び戦闘モードに入っているはずだ。(西川 結城)
(BLOGOLA編集部)
2014/09/12 17:00