Photo: Norio Rokukawa
ベスト16の戦いが、その先に進むための総力戦だったとすれば、ベスト8の戦いは、負けないための持久戦、という側面のほうが強かった。W杯で一番面白いのはクォーターファイナルというのがこれまでの定説だったが、強豪国といえどもチームのピークをベスト8以降に設定する余裕などないことが、逆に証明された格好だ。コンディショニング等、チームとして、個人として我慢できないチームが敗れ去っていった。ここまでコスタリカを支えてきたキャプテン、ブライアン・ルイスの肉離れ、そしてPK失敗は、それを物語っていた。
それでも、ベスト4はブラジルvsドイツ、オランダvsアルゼンチンと、大会前の予想どおりの顔ぶれとなった。この4チームに共通するのは、ネイマール、ミュラー、ロッベン、メッシと、高速ドリブルと決定力という天が与えた2物を持った選手が、その武器を存分に発揮してきたことだ。残念なのはネイマールの骨折である。最も華のある選手が負傷欠場とは、ブラジルチームのみならず大会そのものの盛り上がりにも影響を及ぼしかねない。ロッベンの再三のシミュレーションもどきの転倒にイエローカードが出ないのは、「ドリブラーを守れ」という審判団の暗黙の意志一致があるのかもしれない。となると、期待したいのがメッシである。あのマラドーナの五人抜きドリブルを超えるシーンを、いつメッシが見せるのか。いよいよ舞台は整った。
懸念された現地の大がかりなデモは、大会が始まると同時に潮が引くように消えていった。問題が根本的に解決されたわけではなく、鳴りを潜めている状態だ。加えてメキシコやコロンビアなど観客動員を誇る中南米のチームも、次々と姿を消した。盛り上がっているのは試合当日のスタジアム内外とファンゾーンのみ。これがサッカーの母国ブラジルでのW杯なのか。ブラジル国民は冷静に、あるいは冷やかにこの大会を見つめている。(六川則夫)
(BLOGOLA編集部)
2014/07/08 11:53