このままでは、屈辱的な評価も免れない。そんな状況で迎えた44分に、本田圭佑は意地を見せたのだった――。
強風吹き荒れる、スタディオ・サンテリア。サルディーニャ島南部の町、カリアリのホームスタジアムのすぐ横には海を見渡すことができる。この日は朝から港町特有の海風が強く、試合展開に影響を与えるのは必至だった。
前半、風上に立ったのはミランだったが、そうした条件を生かす戦い方ができずにいた。空中のみならず地上でも風に流され止まってしまうボールに対して、むしろコントロールミスや目測を誤っていたのはアウェイチームだった。
ミランは序盤から守備陣がイージーミスを繰り返してピンチを迎えた。29分にはCBボネーラのバックパスをGKアメーリアがキックミス。それが相手に渡り、最後はアメーリア自身もやすやすとかわされ、あっけなく先制点を許してしまった。
一方、試合の流れを取り戻すチャンスもあったが、その好機をことごとく逸してしまった選手が、本田だった。
18分、中盤でロビーニョとカカのコンビでボールを運ぶと、右サイドのバロテッリにパス。その瞬間、この日は右サイドで先発していた本田がバロテッリと位置を入れ替わるように中央ゴール前に走り込んだ。バロテッリはその動きを見逃さず、ダイレクトで本田へボールを送り込む。完全にディフェンスラインを抜け出した背番号10だったが、右足で放ったシュートはGKにストップされてしまった。
続く39分、今度も流れの中からゴール前に侵入すると、右サイドを上がってきたSBデシーリオにクロスを要求。お望みどおりの完璧な弾道のボールが本田の頭に飛んできたが、フリーで完璧に打ったように見えたヘディングシュートは、またしてもGKに弾き出されてしまった。
後半にも決定機が訪れた。59分、中盤中央でボールを受けると、そのままドリブルで敵陣へ推進。左前方のロビーニョに一度ボールを渡すと、そのリターンをペナルティーエリア内で受けた。あとは左足を振り抜くだけ――だったのだが、その左足シュートがミートせず、ボールは力なく宙を舞った。
3度の失敗。結果が何より重視されるここカルチョの国では言い逃れのできない事実を、本田は残してしてしまった。ただ、何とか挽回するチャンスを信じて、粘り強くプレーしていった。
77分にエマヌエルソンに代わってアバーテが投入された時点で、ミランは3人の交代枠を使い切った。本田がミラン加入後初めて90分フル出場することになった瞬間だった。ここから、彼は最後のスパートをかけた。
83分、右サイドで得たFKを本田が蹴った。ゴール前に上がったボールはファーサイドのカカの頭にピンポイントで渡ったが、そのシュートを相手DFが体を張ってクリア。得点にはならなかったが、この日の本田はキックが冴えていた。
そして迎えた、試合終了間際のセットプレー。42分にバロテッリが直接FKを叩き込み土壇場で同点に追い付いた状況で得た、このチャンス。本田は強風で流されるボールをセットし直し、次の瞬間、ニアサイドに鋭く曲がるボールを蹴り込んだ。そこにいたのは、途中出場のパッツィーニ。右足ダイレクトで合わせ、ボールはゴールネットを揺らした。
歓喜に沸く、ミランイレブン。キッカーだったため一人味方とは逆サイドにいた本田だったが、バックスタンド側にいたチームスタッフのところへ駆け寄り、抱擁。自らの足で呼び込んだ、逆転決勝弾だった。
試合後、その表情に笑顔はなく、喜びも悲観もしていない様子。ただ内心は違うだろう。最後に結果を残したことで、ホッと胸を撫で下ろしてはいるだろうが、本田の頭の中には間違いなくその前の3つの好機逸のシーンがこびりついているはずだ。
この日もファンサービスには応えるも、無言でバスに乗り込んだ。そのままバスは空港に直行し、ミラノ行のチャーター機でサルディーニャ島を後にした。
中2日、3日と続いた約2週間の連戦は、ここでひとまず落ち着く。この期間で、本田はメディアから持ち上げられ、そして厳しい意見も投げかけられた。ジェットコースターのように上下するイタリア独特のこの論評にさらされることを、すでに彼は経験したのだ。このカリアリ戦は最後で一矢報いたものの、試合全体としては確実に批判されるに値する内容となった。本田自身も、そしてミラン全体もそうだったと言える。周囲の声を一つでも称賛に変えていくためには、もちろん結果を残すしかない。(西川 結城)
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(BLOGOLA編集部)
2014/01/27 14:10