照り付ける太陽は体力に加えて、脳みその中にある何か大切なものまで融解させるかのよう。暑熱の地として知られる群馬県で行われているadidas CUP日本クラブユース選手権(U-18)は、過酷な戦いの場となっている。7月27日から29日にかけて、そのグループリーグ戦が行われ、16強が出そろった。(その詳細は http://www.jcy.jp/ まで)
28日、その灼熱の群馬にあって最も過酷な環境にあるとウワサの下増田運動場に赴いた。野球場の外野席にグラウンドを確保するという独特の形状の会場は、日差しをさえぎるものが何もなく、(もちろん選手ほどではないが)記者や観客もまた厳しい戦いを強いられる。脆弱な肉体で知られる筆者などは、試合を前に整列するC大阪U-18(白ユニ)の選手たちを見ながら、「あれ、ニッキいないんだ(※ハーフナー・ニッキは名古屋U-18の選手)」といった頓珍漢な感想が一瞬思い浮かび、速報サイトを見ながら「お、ジュビロは磐田に勝ったんだな」などと妄言を垂れ流す始末。その群馬から帰宅する際にはフラフラする足元と吐き気を自覚し、翌朝からは頭痛が顔を出す有り様だった。選手の祖父母と思われるご高齢の観客の姿も見られただけに、来年以降もこの会場を使うのであれば、観客側(つまりバックスタンド側)にもテントの設営をお願いしたいところだ。それが無理だとしても、せめてご高齢の方を本部テントに招くといった配慮はすべきだろう。
無論、もっと根本的に「これでいいのか?」という意見もある。あるJクラブの指導者は「誰かが倒れて初めて変わるんですかね」と吐き捨てたが、日本有数の暑熱を誇るこの上州で試合をするということもあるし、もう少し配慮があってもいいはずだ。「せめて朝か、16時からの試合にしてほしい」(名古屋U-18・高田哲也監督)という現場の声は切実だ。予算の問題は付いて回るだろうが、夕方や夜のゲーム導入は検討すべき課題だし、日程に幅を持たせることも考えていいはずだ。未来のJリーガーたちが多数出ていることを思えば、Jリーグが予算を付けてもいいのではないか。
そして来年も群馬県開催で決まっているとのことだが、再来年以降の開催地については一考があってもいいのではないか。グラウンドやボランティア要員、そして宿泊施設の確保を考えると、決して容易でないことは理解しているし、そもそも震災で開催自体が危ぶまれていた時期に群馬県の厚意によってこの大会が救われたという恩義があることについても理解している。そもそも、筆者は「環境が悪い」という言い方は好きではない。「プロを目指す選手が、『暑いから無理』なんて言ってはいけない」(東京Vユース・冨樫剛一監督)という考え方も、一つの正論だと思う。ただそれでもなお、比較的涼しかった昨年から一転、本格的に「群馬の猛暑」を体感させられた今年は、「これでいいのか?」という疑問を覚えずにはいられなかった。
日本クラブユース選手権(U-18)は、休養日を挟んで31日にラウンド16、翌8月1日に準々決勝が、群馬県内各地で開催される。
「快晴」は「危険」と同義だった群馬の戦い。写真は敷島運動公園会場。
Photo:岩田 陽一
(EL GOLAZO 川端暁彦)
2012/07/29 19:14