「今年の大卒の3人、松田天馬、鈴木国友、山口和樹はまったくダメでした」
天皇杯2回戦、北海道教育大学岩見沢校との1戦を1-0の勝利で終えたあと、監督記者会見で曺貴裁監督が突然個人に言及した。声のトーンは低く重圧があり、こわばった表情で一点を見つめたまま発せられた言葉に、会見場の空気は一気に張り詰めた。
例えプレーが良くても悪くても、曺監督が特定の選手に対してコメントすることは、滅多にない。確かにこの日は苦戦を強いられ、1-0の辛勝という結果ではあったが、技術レベルやスピード感が違う相手にプレーの感覚が狂ってしまうのはよくあることだ。ましてや、この3人のプレーそのものがそこまで悪かったとは、少なくとも筆者には映らなかった。そして何より、曺監督が名指しで批判をしたことに大きな衝撃を受けた。
試合翌日、そのコメントの真意をもう一度聞くために練習場に向かい、非公開トレーニング後にあらためて話を聞いた。
「大学を出てプロを選んでいるので、選手たちはそういう覚悟を持ってウチに来ていると思っています。『1年目でもそこそこやってる』ではなく、すべてのことを消化してやらなければいけない。その目線からしたら、彼らはゆるい。ただそれだけです」
「いい素質は持っています。それでも、僕が目線を落として『お前らなりによくやってるよ』と言うよりも、ああやって言及するほうが成長すると思いました。会見で言えばニュースになり、全世界の人たちが彼らのプレーを見返すかもしれません。世の中の目が彼らに向いていることをわからせたかった」
公式戦の次の日に練習がある場合は、長い時間出場したメンバーはリカバリーメニューだけこなして、30分程度で上がるのが通例だ。しかし、この日は3人ともフルメニューを消化したという。何かのメッセージとして参加させたのかと思いきや、まったく逆だったようだ。
「あの3人には昨日の試合が終わったあと、3日間自宅で謹慎しろと言いました。それでも今日グラウンドに来てスパイクを履いていました。『何しに来たの』と聞いたら、3人なりに考えたことを話したので、練習に参加させました」
「選手は監督やまわりの指示を聞き入れつつも、最終的に自分で考えてジャッジしないといけません。そういったことも含めて、もっと自覚を持って大人にならないといけません。それを提示するのが自分の仕事です」
そして選手たちも、「ビビっていた」(松田)、「思い当たる節がある」(鈴木)、「100%合っている」(山口)と、一様に納得している様子。本人たちも気づいていなかった気の緩みを強烈に指摘され、もう一度心を引き締めた。だからこそこの日は朝早く3人で集まって話し合い、練習参加を懇願したようだ。
9日(土)のルヴァン杯プレーオフステージ第2戦を終えると、チームは11日間のオフに入る。次の公式戦は7月だ。その時にはもう一皮向けた新卒3人組の姿が見られるよう、今から期待したい。
(湘南担当 中村僚)
2018/06/08 22:52