「足が長い。意外とスタイル良いですからね。うらやましいですよね」
浦和のMF関根貴大が笑いながらそう言ったのは、日本代表FW原口元気についてだった。見た目の話ではない。そのうらやましさも少しはあるかもしれないが、「自分が同じことをやっても届かない」というのは守備についてだ。
15日に行われたW杯アジア最終予選・サウジアラビア戦(2○1)。大一番でチームを勝利に導いた原口を見て関根は刺激を受けた。ゴールはもちろんのこと、関根が着目したのは原口の守備と走力。結果としてPK戦で敗れたが、120分間、最後まで戦い抜いた天皇杯4回戦・川崎F戦についての話題になると、関根は自らこう言った。「昨日の元気くんを見ても思ったけど、やっぱり走れないとなって」。
守備についてもそうだ。「元気くんは守備をするだけではなくてボールを取れるので、そこがすごい。守備をしてから前に出ていくのもそうだけど、守備の対応というか。しっかり足に当てるところ」と羨望の眼差しを送る。それが「元気くんは足が長い」という話につながった。
原口が強く守備を意識したのは、海外移籍を果たした14年の開幕前。前年に多くの失点を重ねたチームが失点を減らすことをテーマに掲げたのと同時に、「世界に行ったときに試合に出られるか出られないかというと、きっと俺は守備をしないと出られないと思う」と口にしていた。「そりゃ攻め残りたいですよ。でもそれでやられたら結局、勝てないから。そう思っていまは必死に戻るし、それがチームの決まりだったらやらないといけない」(原口)。そしていま、その言葉どおりのプレーをドイツでも代表でも見せている。
14年は関根がトップ昇格した年でもあった。同じユース出身者として、原口は関根に目を掛け、関根は原口を尊敬する。チームが変わってもその関係は変わらない。身長や足の長さはもう追い付けないだろう。ただ、プレーは違う。「自分はもっと成長できる」。先を行く先輩の背中を見ながら、追い付き、追い越すため、関根は走り続ける。
(浦和担当 菊地正典)
2016/11/16 17:44