日体大サッカー部の同期で主将と副主将の間柄だった甲府の稲垣祥と湘南の菊地俊介。
前節の大宮vs湘南戦で、菊地が途中出場を果たして3月24日の大けが(右ひざ前十字じん帯損傷、全治8カ月の診断)から復帰したことを稲垣は喜ぶが、連絡は取っていない。「連絡しなくても分かる。アイツの性格を知っているから降格したことに責任を感じているだろうし、リハビリを相当頑張った結果の復帰だということも…」。
稲垣も一つのミスが命取りになりかねない非情な残留争いを戦うチームにあって、前節の福岡戦(2◯1)は自らのオウンゴールで先制を許した。チームは逆転勝ちを収めたものの、「チームメートに頭が上がらない。何を言っても言い訳になる」とだけ話してミックスゾーンをとおり過ぎた。オウンゴールで0-1になった時点からしばらくはチームの内容も悪く、心が傷つかないように“負けを覚悟する準備”をしたくなる試合だった。しかし、チームはGK河田晃兵が福岡の決定機を3度防ぎ、後半のダヴィとドゥドゥのゴールで今季初の逆転勝利。“終わり良ければすべて良し”とするにはJ1残留を勝ち取らなければならないが、責任を背負おうとするからこそ次に期待する。
「チームメートがいろいろイジって落ち込むスキを与えてくれなかった」と笑顔を見せた稲垣。主将の山本英臣からは、「俺が大きなミスをした試合は負けている。でも、お前はミスをしてもチームが勝っているから運が良い」と言われたそうで、この一言が気持ちを少しラクにしてくれたようだ。前半のみで交代したこともあったが、福岡戦翌日の練習もオフ空けの練習もフルメニューをこなした。「サッカーで体を動かしているほうがスカッとする。あらためて、良いチームメートに恵まれていると感じた」。試合当日に話す機会があるの菊地と連絡を取るつもりはない稲垣。二人が同時にピッチに立つことがあるのか、試合後にお互いの姿を見てどんな言葉を交わすのか。昨季の湘南のような一ケタ順位(8位)は望めないが、金で順位が決まらないことを今季も証明して、菊地へのエールにしたい。
(甲府担当 マツオジュン)
2016/10/26 09:14