7月14日から16日にかけて『第16回国際ユースサッカーIN新潟』が、新潟県内にて開催された。同大会には地元のU-17新潟県選抜、U-17メキシコ代表、U-17ハンガリー代表、そしてU-17日本代表が出場。総当たり方式で、酷暑の中、3日で3試合のハードスケジュールをこなした。
近年、メキシコの年代別代表チームは好んで夏の日本へ遠征してきている。今年もこのU-17代表に加えて、8月の豊田国際ユース大会にU-16メキシコ代表が参戦しており、この流れは途絶えそうにない。あらためて説明するまでもなく、“日本の夏”は過酷だ。強烈な太陽光線と充満する湿気によって、サッカーというスポーツは大きな制限を受けることになる。その暑さはメキシコの若い選手たちにとってショッキングなものだそうだが、「だがそれがいい」というのがメキシコの指導者の発想だ。国内にいては決して味わえない異国の気候を体感し、普段できているプレーができなくなる環境で何ができるかを考えさせること。そして「その過酷な暑さの中、チームのために献身的に戦ってくる日本人のすごさ」を感じることもまた、良い経験であるという考え方なのだという。
そのメキシコは、大会の第1戦で新潟選抜を7-1で一蹴すると、第2戦でもハンガリーに勝利。2連勝で、ビッグスワンを舞台に行われた日本との最終戦を迎えていた。小柄ながら“強さ”のある選手が多く、技巧は総じて高い。MFのラミレス・ガルシア(グアダラハラ)を中心によくまとまった好チームである。
対するU-17日本代表は、1995年生まれの選手たちによって構成されたチーム。昨年のU-17W杯で8強まで進出したのが1994年生まれのチーム、来年のU-17W杯を目指すチーム(現・U-16日本代表)が1996年生まれのチームであり、この世代はその中間。いわゆる“狭間の世代”にあたる。3年後のU-20W杯を目指す年代であり、本格的にチームとしての活動はまだしていないが、強化の空白を作らないために、こうした大会があるたびに臨時編成で集まっている。監督は内山篤氏(元磐田監督)が務めた。
今大会、日本は初戦でハンガリーを4-1で破ったものの、第2戦で新潟選抜に0-2で苦杯。選手たちにとっては大きな悔いを残す試合となった。「絶対に4点決めて(得失点差でメキシコを逆転し)優勝する」(DFハーフナー・ニッキ=名古屋U-18)と誓った最終戦は、酷暑の中でリバウンドメンタリティーが問われるゲームともなった。
日本の布陣は[4-2-3-1]。GKに阿波加俊太(札幌U-18)、DFは右に快足オーバーラップが魅力の広瀬陸斗(浦和ユース。かつて浦和でプレーした広瀬治氏のご子息でもある)、左には鋭いキックを持つレフティー内田裕斗(G大阪ユース)を配し、中央を長身のハーフナーと畠中慎之輔(東京Vユース)が固める4バック。ボランチ2枚に本職CBながら強気の縦パスが光る内山裕貴(札幌U-18)とチームのキーマン・川辺駿(広島ユース。名前は「はやお」と読む)。2列目は、左に技巧的でボールを動かせるMFの渡辺夏彦(國學院久我山)、右に攻守の切り替えが速く、パワフルなキックを持つ川上翔平(FC東京U-18)、中央に世代のエース格である南野拓実(C大阪U-18)が入った。そして1トップは鋭い動き出しが魅力の越智大和(広島ユース)が務めた。
試合は一進一退。序盤はメキシコの素早いパスワークと動き出しを捕まえきれず、立て続けに決定機を作られたものの、日本守備陣も徐々に対応。逆に越智がGKと1対1の決定機を迎えるなど、徐々に押し戻していく。双方ともに決め手を欠いていたゲームが動いたのは80分以降。日本は越智を下げて、宮市剛(中京大中京高。アーセナルの宮市亮の実弟)をセンターFWとして投入。暑さもあって足が止まっていた日本攻撃陣はこれで流動性が増し、第3の動きが増え始める。84分には宮市が左から中央へと鋭いドリブル突破を見せ、エスカミージャ・モレノに警告。モレノは直後の87分にも川辺を止めようとして警告を受け、退場に。これでメキシコは守備を固めてドローでゲームを終える方向に舵を切り、日本は逆に攻め切るしかなくなった。
そんな試合の決着は89分。大きく空いた右サイドでスルーパスを受けた川上は、利き足ではない右足を強振。この日は似たような場面での右足シュートがGK正面を突いていたが、迷いなく放ったのが奏功した。「何度も(チャンスで)外していて、これ以上外すわけにはいかなかった」(川上)。このゴールで、勝敗は決した。
目標の4点差勝利には届かなかったものの、実力派チームのメキシコ相手に、酷暑のタフなゲームで勝ち切ったことは、選手の自信になるはず。「昨日(新潟県選抜に敗北)は情けない試合をしてしまった。勝ちたかった」(川上)のだから、なおさらだろう。もちろん、この大会の勝敗がこの世代の将来を左右するといった大きな話ではないが、かといってこうした小さな積み重ねを軽視しては、大きな進歩も生まれない。
「ここから先は質の高い選手が競争していくことが大事になる」と語った内山監督は、前日の新潟選抜戦で先発した選手の多くをベンチに置き、交代でもあえて起用しなかった。その理由について監督はノーコメントに徹したが、選手たちはそれぞれ感じるところがあったはず。この大会に出ていなかった選手を含めて可能性のある素材が多い年代だ。次の招集は来年になりそうだが、「質の高い競争」によって、個々がさらなるレベルアップを遂げることを期待している。
(EL GOLAZO 川端暁彦)
2012/07/18 19:38