阪倉裕二前監督が引責辞任した翌日の21日午後、栃木サッカークラブ事務所で記者会見が行われ、岐阜などで監督経験がある倉田安治新監督の就任が発表された。倉田監督は22日の明治安田J2第25節・讃岐戦から指揮を執る。任期は来年1月31日までの約半年間。
昨日の午前10時頃、湯田一弘強化部長より連絡を受けた倉田監督はその日のうちに栃木入りし、契約に最終合意。さっそく今季前半戦で対戦した讃岐戦の映像から改善すべきポイントを絞り、21日の練習で選手たちと取り組んだ。新監督の就任記者会見はその直後に行われた。
以下、一問一答のダイジェストでお伝えする。
冒頭、倉田監督からの挨拶。
「話をいただいたときには自分のなかでは決めていました。実は、中国に行ったときもまさかスーパーリーグの監督になれると思っていなくて、今回のようにドタバタで決まったんです。それですごく苦しい思いをして、日本に戻ってきたわけですが(あらためめて自分は)戦う場所が欲しかったんだなあと思って、この仕事を引き受けました。僕が思うのは、J2に残留すること、できれば早い段階でJ2の残留争いから抜け出したいので、それに向かって魂を込めて一試合一試合戦う、それだけです。去年、中国スーパーリーグの監督を引き受けたときも、恥ずかしい話ですけど給料が払われなかったり、外国人選手が帰ってこなかったり、レギュラー選手が移籍したりする中で、唯一中国人中心のチームを作って、それで勝ち点1差で降格しました。それが自分の中で非常に残っていて、ここではきちんとした結果を出したい。それだけです。栃木SCの発展のために全力をつくします」
以下、質疑応答。
——栃木SCに持たれている印象を教えてください。
「戦う場所を求めていた、という理由で決めた部分はあります。それに(強化部長の)湯田くんは昔から知っているし、友達ですがこれは仕事です。栃木については僕は松田さん(松田浩、元栃木SC監督)と6年間近く一緒に仕事をしていたので注目していた部分はありました。ただ、債務超過については一般的なイメージになっていると思うし、いまはそれを解消して若い選手に切り替えて、いたずらにベテランに頼らずに、若い選手をしっかり育てるチームだなという印象はあります」
——今季の栃木の戦いぶりの感想は。
「(今季前半戦の)讃岐のゲームは見て、分析もして、編集して選手たちには見せました。やっぱりこの順位なので、なかなかいいサッカーをやっているとは言えなくなってしまいます。守備も、攻撃も、攻守の切り替えの局面も改善する点があると言わざるを得ないです」
——今朝、チームに合流したとのことですが、どんなことを強調したのでしょう。
「特別な状況だと思うんです。本来ならばキャンプで何週間もかけて人間関係や信頼関係を作っていくものですが時間がありません。突貫工事ですが(今季前半戦の)讃岐戦の映像を見せて、『ここに問題がある』とはっきりと指摘して明日の準備をしました」
——シーズン途中の就任で残り18試合。倉田監督の戦術の浸透が一つのポイントになると思いますが、知っている選手もいる中で戦術がこれくらいで浸透するという目算は。
「こういう状況で、この時期なので、簡単ではないです。常に試合があるし、何かを大きく変えるのは混乱を起こすので、現状に少しずつ合わせなければいけない。ただ、そんなことよりも1ポイントでも確実に拾っていくこと、負けそうなゲームを何とか引き分けるとか、そういうことに取り組んでいくほうが、いま僕のサッカーを作るなんてことよりもよほど大事なことだと思っています」
——湯田強化部長からは守備の再構築を要求されているが、どういう道筋を持たれているのでしょう。
「監督とは方法論を持っているということ。どういうふうに守備をするか誰もがその方法論を持っていると思うし、自分のやり方がある。それ細かく説明すると長いので、自分の練習方法を、今日もやりましたが、毎週毎週やっていきます」
——ご本人が目指す戦術、スタイル、限られた時間で植え付けたいモノは。
「現代サッカーはトータルだと思っていて、カウンターサッカー、ポゼッションサッカーとか、もうないです。ゲームの流れや状況に対応していく。守備なら守備をしっかりやる。ボールを奪ったらカウンターアタックをしかける。カウンターアタックができないならボールを保持する。どの局面でもきちっとプレーできるチームを作るのが現代サッカーの特徴です。状況に応じて柔軟に戦えるチームが一番目指すところです」
——いまの状況に合わせつつ、最終的にはどんな色をチームにつけていきたいですか。
「チームのコンセプトのなかでプレーヤー一人ひとりがどう想像力を発揮できるかが現代のサッカーです。何かを構築しようとすると窮屈だという選手がいますが、それではダメなんです。しっかりした戦術や規律のなかでしっかりとアイデアが出せる選手。そういう選手をたくさん育てることが大事であって、僕は方向性を出すけど、プレーヤーはしっかりとした判断をしてほしいし、想像力を発揮してもらいたい。そういうチームになったらいいと思います」
——栃木のサポーターに向けて一言お願いできますか。
「残りの試合全部、一試合一試合、気持ち込めて戦います。明日のゲームは選手が奮起すると思うし、(一連の経緯が)大きな刺激だし、自分たちに責任がないと思っている選手は一人もいないと思う。今日の練習でも選手たちには覚悟を感じたし、非常に良かった。だから明日は選手たちがやってくれると思います」
(栃木担当 鈴木康浩)
2015/07/21 21:45