新しいチーム作りへ、ギラヴァンツ北九州も動き出した。新監督、新加入の選手の発表、その報道に私も含め、サポーターやファンも期待を持たずにはいられない。
ただ、そこへ向けてのプロセスは正しかったのか?
今までチームに貢献したにもかかわらず、居場所を奪われたように去って行った、多くの選手たち。クラブからは公式リリースはあったものの、彼らの最後のコメントは聞けなかった。
最後の練習が行われた11月30日。神妙な顔つきで、本城を足早に去るその選手たちに、私は無理強いしてまでコメントを聞くことは止めた。サポーターやファンの気持ちを察すれば、聞くべきだし、記事にすべきだとは思ったが、その仕事は私ではなく、クラブの仕事だと思ったからだ。
その中で唯一重い口を開いてくれたのが、小森田友明選手だった。集まった報道陣の前で、ゆっくりと、1つ1つの言葉をかみしめるように話してくれた。
「本当に、みんなが成長できた2年間でした。選手として、13、4年やって来たが、こうやって1つになれて終わったのは初めて。ヤッさん(三浦泰年監督)が、本当に選手のこと、チームのことを大事に考えてくれていたので、チーム内から批判も起こらなかった。自分も、チームが勝つために、成長するために1年間やって来たが、クラブからは評価してもらえなかった。自分だけじゃなく、けがのためにトライアウトに出られない選手も切ったのは『正直、こんなことがあっても良いのか!?』と、とても残念に思う」
「みんな、北九州のために、時間も削って、体も張って、痛めてまで戦ってきたのに・・・。今のフロントは、もっとできると思う。自分はベテランなんで分かるけど、けが人を同じ扱いにされるのは納得がいかない。会社として、選手は弱い立場なんだから。このチームにはお世話になったので、未来は応援したいが、来年、同じことが起きないようにしてほしい。チームを愛してるからこそ、直してほしい。もっと、地元に愛されるクラブになってほしい」
「自分を必要としてくれるクラブがあれば、されるようになりたい。このチームのような一体感が作れるように、またプレーしたい。自分ももがく。他の選手も、もがいてもがいて、はいあがって来てほしい」と、自身に言い聞かせるように、共に戦った、志半ばでチームを離れる選手たちにエールを送った。
12月11日にフクダ電子アリーナで行われた、Jリーグ合同トライアウトには、小森田選手のほか、鈴木慎吾選手、永畑祐樹選手、関光博選手、水原大樹選手と、北九州に在籍していた5選手が参加。視察に訪れた各クラブの監督、スカウトにアピールを行ったが、その後の情報が入ってこず、とてももどかしい日々が続いている。
この合同トライアウトに参加しなかった長野聡選手は、来季よりタイのナコン・ラチャシマFCへの加入が発表されたので、少しホッとはしているが、引退も考えている選手もいると聞くと、やり場のない気持ちが湧いて来る。
来季に向けて新しく走りだしたクラブ。気持ちを切り替えようと努力しているファンやサポーターには、水をさすようで申し訳ないとは思う。しかし、これから先、本当にこのクラブのために戦いたい、残りたいと選手たちが思ってくれるようなクラブになるためには、今回のことは、チーム、選手たちへの配慮が、クラブには足りなかったとは言わざる得ない。
(北九州担当 坂本真)
2012/12/18 18:35