本書は、マンチェスター・ユナイテッドでの輝かしい時代を築き上げたアレックス・ファーガソン元監督が、そこで過ごした魔法のような日々を振り返った自伝である。全25章の構成で語られるのは、ファーガソン監督がマンチェスターUを率いて出会った人々と数々の名試合などについて。クリスティアーノ・ロナウドやベッカムといったチームの中心として活躍した選手の出会いから別れ、またモウリーニョやベンゲルとの因縁や現在の感情などが、彼の口から歯に衣着せぬ物言いでつづられている。何よりも印象に残ったのは、本書に出てくる選手の多さだ。それも、プレミアリーグ史に残る長期政権となったファーガソン監督だからこそ。例えば、2012年からマンチェスターUに加わった香川真司もその一人である。それ以外にもロイ・キーンのような個性のある名選手とのやり取りや、 フォルランといった在籍年数の少ない選手の話もあり、それが監督らしい言葉で語られている部分は非常に面白い。その人数の多さは、ぜひ本書を読んで確認してほしい。それ以外でも、チェルシーとの決勝を制した08年の欧州CLをはじめプレミアリーグでの優勝を果たしたときの話はサポーター必見だ。09年と1年に欧州CL決勝で対戦したバルセロナ、往年のライバルであるアーセナルやリバプール、マンチェスター・シティについて語った話も興味深い。さらに、92年組の話や対戦相手に対するマインドゲームについて、メディアへの対応という部分にも触れ、バラエティーに富んだ内容となっている。マンチェスターUのサポーターですら驚くほどの辛辣な言葉と衝撃的な話の連続は、最後まで読み応えのある内容となっている。ベッカムの額にスパイクを蹴り飛ばした事件、ルーニーの移籍報道など、当時語られることのなかった真実も赤裸々につづられており、英国では物議をかもした問題作。プレミアリーグファンのみならず、誰もが楽しめるだろう。そして本書を読み終えたとき、彼の観察力の偉大さを知ることになるはずだ。(林 遼平)
タイトル:アレックス・ファーガソン自伝
著:アレックス・ファーガソン(小林 玲子 訳)
出版社:日本文芸社(2014年5月29日発売)
定価:2,484円(税込)
四六判/432ページ
(BLOGOLA編集部)
2014/06/17 13:20