4月10日、11日のエル・ゴラッソ本紙に掲載された、FC東京・FW武藤嘉紀選手の移籍報道に関する記事を、ブロゴラに転載する。
先のブロゴラ特報で話題になった続編。武藤嘉紀選手が本紙に語った移籍へ思いとは。
そして武藤嘉紀が大切にしている、本田圭佑選手からアドバイスされた考えとは。
正式オファーを認める数日前に
武藤嘉紀のもとに、イングランド・プレミアリーグの強豪チェルシーから正式にオファーが届いた。3月上旬、いまから約1カ月前のことであった。2018年1月まで残るFC東京との契約に対して、違約金推定400万ポンド(約7億1千万円)の高額条件である。
武藤は昨季のFC東京でのブレイク以降、Jの舞台で、日本代表で、一躍注目の存在になった。TVの世界でも引っ張りだこ、老舗時計メーカーのSEIKOもスポンサーになるなど、彼の周辺はたった1年で激変した。
チェルシーは昨年5月から、日本にスカウトを派遣していた。時期を同じくして、徐々に活躍の度合いを増していった武藤の存在は、自然とその視野に入っていったのだろう。「昨年の秋には本格的に調査に入ったと聞いている」と、現在交渉に当たっているFC東京の立石敬之GMも語る。
武藤はチェルシーからのオファーを正式に認める数日前に、本紙の取材に対して本音を明かしてくれた。「然るべきときが来たら、きちんと話しますよ。ただ自分はチェルシーだからとか、ビッグクラブだからとか、そういう名前だけで右往左往はしたくない。
正直、海外だったらどこでもいいなんて思っていないし、試合に出られないところでもいいという思いもない。例えば、チェルシーにいるのは世界から選び抜かれた選手で、その中から毎試合18人の選手が試合メンバーに入ることができる。冷静に見て、いま、そこに自分が入っていけるかは分からない。そこは本当に客観的に見ていかないといけないと思っている。
欧州の中堅クラブに初めに行って、そこからステップアップしてチェルシーのようなクラブに行けるのが理想なんだろうけど、そんな思い描いたとおりに将来が進むとは限らない。ビッグクラブに行けるチャンスなんて、そんなにないということも自覚している。
自分の中では欧州でプレーすることはもちろん目標の一つとしてある。(今回は)光栄な話でもあるけど、やっぱりまだ即答できないところもある。プレミアリーグでプレーしているイメージはすごくできるんです。でも、それがビッグクラブかどうかは、まだ分からない…」
迷い、逡巡。チェルシーのようなビッグクラブに行くことを時期尚早と言う者もいれば、悩んでいること自体がもったいないと考える者もいるだろう。ただ、武藤は自らを過小評価も過大評価もしていない。周囲がもてはやす自分ではなく、サッカー選手としての“いまの自分”を落ち着いて客観的に見ているからこそ、この一件に深く迷い、悩むのである。
チェルシーの強化スタッフは、武藤の日本人らしからぬプレーの一面を高く評価しているという。「ハードワークできるところと、攻守の切り替えの速さ。日本人はボールがあるところでは良いプレーができるけど、ボールがないところでもしっかりプレーに関与できるところを評価していると、チェルシーのスタッフから聞いている」(立石GM)。フィジカルの強さや、縦への推進力。スピードとタフさを兼ね備えたプレースタイルは、確かにプレミアリーグで展開されているサッカースタイルと合致する。レベルとして通用するか否かは未知数だが、武藤が自分でも話すようにイングランドの地で彼がハードに戦う姿は確かに想像できる。
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(FC東京担当 西川結城)
2015/04/11 21:34