FC東京は8日、日本代表FW武藤嘉紀にイングランド・プレミアリーグのビッグクラブ・チェルシーから獲得オファーが届いていることを正式に認めた。
この日、大金直樹代表取締役社長とともに記者の前に立った武藤。「素晴らしいチームからオファーをいただいたことは光栄に思います。ただ、自分自身はまだ何も決めていない状態で、いまは(明治安田)J1・1stステージ優勝のために集中したい」と殊勝に語った。
昨年5月ころから日本にスカウト陣を派遣したチェルシー。徐々にJ1で活躍の度合いを上げていった武藤に注目し、秋ごろから本格的に調査をスタートしていた。2018年1月まで武藤との契約を残すFC東京に対して、チェルシーは推定400万ポンド(約7億1千万円)の違約金を支払うオファーを提示している模様。イングランドではEU圏外の外国籍選手に対する就労ビザの認可が厳しいが、交渉に当たっているFC東京の立石敬之GMは「そこはクリアしていると聞いているし、大丈夫だからこそ正式オファーを提示してきている」と話した。
チェルシーサイドは、主に武藤の日本人離れしたプレーぶりを高く評価。立石GMは「ハードワークできるところと、攻守の切り替えの速さ。日本人はボールがあるところでは良いプレーができるけど、ボールがないところでもしっかりプレーに関与できるところを評価しているようだ」と相手側の武藤評について語る。
現在チェルシー以外にもイタリアの名門クラブなど、複数のオファーや獲得打診がすでにクラブに届いている。そうした中で、武藤はこう語る。
「焦って決めることではない。まずはJの試合があるし、FC東京との契約もある。一つのクラブに絞るわけでもないし、幅広い目線でこの先進んでいくキャリアや成長を考えたい。移籍して試合に出られるかも冷静に判断しないといけない。チェルシーからの評価はうれしいけど、うぬぼれる時期ではない」
開幕前からチームのタイトル獲得を目標に掲げていた武藤は、まずはJ1・1stステージでFC東京を優勝に導くことを念頭に置く。一方、チェルシー側は今年8月に開幕する来季2015-16シーズンに向けて、7月から始まる夏季キャンプからの合流を望んでいる。6月下旬に最終戦を迎える1stステージ後に渡英することができるだけに、日程的にも支障はない。
「もちろん第一はクラブに残って欲しい」と大金社長も話すとおり、現在のFC東京にとって武藤はピッチ外でも大きな波及効果をもたらす選手だけに流出は手痛い。しかし、世界有数のビッグクラブから届いた好条件でのオファーでもある。最終的には本人の判断を尊重する方針だ。
ベルギー代表のMFアザールやブラジル代表のMFオスカル、スペイン代表のFWジエゴ・コスタに元コートジボワール代表のFWドログバと、並み居る実力者が名を連ねるチェルシーの攻撃陣。そこに割って入る決断をするか否か。武藤が青いシャツに袖を通し、ジョゼ・モウリーニョ監督率いる世界的強豪に加わるかに注目が集まる。
(FC東京担当 西川結城)
2015/04/09 04:30