今夏の移籍市場において、一番の驚きをもって伝えられたのが日本代表主将・遠藤航のリバプール移籍だった。彼の移籍に「エージェント」として関わった遠藤貴氏(株式会社ユニバーサルスポーツジャパン代表取締役)が、著者として9月26日に「代理人は眠らない 世界への路を拓くサッカー代理人の流儀」(徳間書店)を出版。その出版記者会見が、28日に都内で行われた。
遠藤氏の代理人人生を書籍にすれば、読み物として面白いのでは。広くビジネスパーソンの学びになるのではないかーー。
徳間書店の担当者によるその強い思いが、ここまで表舞台に頑なに出てこなかった遠藤氏を揺り動かした。それでも、「表に出るべきは選手」の考えをもつ遠藤氏との間に、数ヶ月の押し問答はあったという。イングランドサッカー協会公認代理人で、現在は伊藤洋輝、鈴木優磨らをサポートしている遠藤氏。氏のこれまでの代理人人生でのエピソードが自身の文章(以前、ワールドサッカーダイジェストに記事も寄稿していた!)と、構成を務める伊東武彦氏(元週刊サッカーマガジン編集長、ノンフィクションライター)の文章を交錯させる独特の手法でページは進んでいく。
さらに、校正作業に入ったところで急きょ進んだという遠藤航のリバプール移籍の裏側も語られる。遠藤航の高校時代からサポートし続けてきた遠藤貴氏が、急きょイギリスへ飛んでリバプールの強化担当や顧問弁護士、そして遠藤航自身とともに深夜、ホテルの会議室で契約内容を詰める場面は緊迫感がある。以前の話の中には、ミシャことペトロヴィッチ監督を巡る脅迫文の存在などもあり、驚きの内容も多い。
出版会見では、書籍の帯に書かれた「10代の頃から思い描いてきた夢を一緒にかなえることができました!」という遠藤航のコメントについてのエピソードが明かされた。「こんなコメントはおこがましい」と固辞した遠藤貴氏に飛び込んできたのは、遠藤航自身からの「本心です。この内容で大丈夫です」という回答。遠藤貴氏はそれを聞き、号泣したそうだ。
代理人は、「総会屋のような印象をもたれると思う」と遠藤貴氏は言う。ただ、実情は異なる。選手を家族のように支え、ともに悩み、道を探していく。「どんな言葉をかけるか、1日悩むこともある」。この書籍のタイトルにあるように、眠らずに仕事をすることだってしばしばだ。「007」シリーズに登場してきそうなダンディーですらっとした体型の遠藤貴氏自身も、先述のとおり人見知りながら温かい心をもつことが伝わる。そうして親身に支えるからこそ選手や監督から信頼され、仕事や選手の未来が広がる。
今回の書籍をプロデュースした徳間書店の担当者は、10数万部の本をコンスタントに世に売り出すヒットメーカーだ。その彼が、こそっと「今回の題材は、自分がどうしても取り上げたいと思ったもの」だと教えてくれた。これが興味深い内容であることに疑いの余地はないだろう。
ビジネス書として、そして一人の男の半生を描いた著として、読んで損はない一冊になっている。
【徳間書店】https://www.tokuma.jp/book/b634299.html
【Amazon】https://www.amazon.co.jp/dp/4198656886/
(BLOGOLA編集部)
2023/09/30 20:54