J屈指のドリブラー、相馬勇紀と三笘薫。DAZN『Jリーグプレビューショー』とEL GOLAZOの共同企画として、ライバルウイーク特別インタビューを実施した。勝点差『3』の1位と2位が2週連続で対戦するビッグマッチを前に、大学時代からしのぎを削り合ってきた二人は互いのことをどう見ているのか。また、この試合のポイントはどこなのか。決戦を前に、存分に語ってもらった。
数字を支える自己改革
―直近の第11節・G大阪戦は1ゴール1アシストと素晴らしい活躍でした。
「今年は結果を大切にしています。パスの受け方とスペースの使い方、相手との駆け引きは(マッシモ・フィッカデンティ)監督からもアドバイスを受けていて、自分の中で感覚をつかめています。まだまだ満足はしていないですが、成長は実感しています」
―先発出場が昨季より増え、個人データでもここまでアシストとラストパスがチーム1位、ペナルティーエリア内のドリブル成功数もマテウス選手と並んで1位タイです。
「昨年はアシスト数がゼロでしたが、今年は点を取りにいくことでアシストも増えています。今季はVARがあり相手もファウルできないので、エリア内でも積極的にドリブルを仕掛けられています。これもプレーの意識やメンタルが変わったからです。コンディションのところでも今年は体重を6kg落としてキレが出ています。サッカーはフィジカルとメンタルの二つが本当に大切です」
―フィジカル改革以外にメンタルも昨季までと違いが?
「オフにしっかり決意したことが大きいです。プロ入り2年間を見つめ直した結果、『これじゃダメだ。このままではサッカー人生が普通に終わってしまう』と思いました。昨年末のU-24日本代表合宿では、新しく呼ばれた選手も含めてみんながメラメラしていました。今年の僕のマインドは、いろいろな選手の台頭が影響している面があると思います」
―東京五輪まであと少し。ライバルに競り勝ち、18名の枠に入らないといけません。
「家の部屋にも『絶対に出場する』という貼り紙をしています。選ばれることと、あとは五輪に出て金メダルを取らないと意味がないので、海外の選手と対戦してどれだけ活躍できるかまで考えながら日々トレーニングをしています。いまは自信がありますし、アシストとゴールを毎試合取っていくことが大切です。五輪代表には絶対に入りたいです」
薫と僕はタイプが違う
―あらためて川崎Fの印象は?
「リスペクトすべきチームです。だからといって下からぶつかるのではなく、自信を持って絶対に勝つ気持ちで戦いたいです。1対1のデュエルで負けないこと、そして、組織的にプレーできるか。相手は(三笘)薫や家長選手らいい攻撃陣がいます。さらにジェジエウ選手、谷口選手らの堅守をどう攻略するかがポイントです」
―対面する山根選手も攻めに出てくるタイプです。
「視来くんは大学のころから知っているので、上がってきたら絶対に抜かれないようにしたいですし、逆に裏を突いて先手を取りたいです。スピード勝負は絶対に負けません。ボールをどこに置いてどういうプレーをするか、去年の対戦前も分析しました。ただ今年はランニングのコースが多彩で、開幕戦で家長選手にアシストしたヒールパスも内側を走っていました。代表でも日韓戦で同じ形から点を決めていたので、離さずついていくことやマークの受け渡しが大事になります」
―あらためて三笘選手の印象は?
「大学から知っていますし、人柄も真面目です。薫はよく“ヌルヌルドリブル”と言われていますが(笑)、僕は相手の重心を見ながら緩急を使って抜くタイプ。薫はスピードに乗ったドリブルで、普通の選手より相手をはがすタイミングがワンテンポ早いです。DFが足を出したときにはもう抜いています。1、2で足を出すところを1で抜いていくのが薫のドリブルです。ちなみに僕は早稲田大学時代に分析も担当していて、筑波大学戦では薫に2、3枚マークをつけました(笑)」
―三笘選手は「根本的には相馬選手のほうが速い」と話しています。
「僕は瞬発力があるので10m競争は僕のほうが速いかもしれないですが、スピードに乗ったら薫のほうが速いと思います。代表でも“三笘か相馬か”みたいに同じくくりに見られますが、僕が初速から加速までが速いのに対して、薫は初めから加速なしで速く走り続けられるタイプだと思います」
―三笘選手を参考にすることは?
「三笘薫プレー集を普通に見ました(笑)。いいものは参考にするに越したことはないですね」
―そしていよいよ川崎Fとの連戦です。この1週間に大事な試合が二つ続きます。
「2連勝したら大きいので楽しみですね。勝ちたいです。いや、勝ちます。まだ相手は無敗なので、黒星がついたら他チームとの対戦でもブレてくることがあるかもしれません。真っ向勝負あるのみです。去年はリーグ1強になってしまったので、今年は優勝を本気で目指す名古屋がここで叩きたいです」
取材日:4月25日(日) 聞き手:DAZN、西川 結城
相馬 勇紀(そうま・ゆうき)
1997年2月25日生まれ、24歳。東京都出身。166cm/69kg。三菱養和SC調布JY→三菱養和Y→早稲田大→名古屋→鹿島を経て、昨季名古屋に復帰。J1通算73試合出場7得点。
引き出しを増やすワクワク感がある
―ここまでのご自身のプレーについて。
「先発が増えて出場時間は昨季よりも延びていますが、数字はまだまだ足りないというのが実感です。先発で出られれば、サイド以外でプレーする回数も増えます。ビルドアップに参加したり、クロスに入るところ…ミドルシュートはまだまだですが、そうした部分で足りないところが多いと実感させられたり、気付きも多い。いろいろな経験をしながら、引き出しを増やそうとしている段階です。そこへのワクワク感は昨季よりあります」
―監督からは、「ドリブルでの仕掛け」についてどう言われているのでしょうか。
「監督からは毎試合前にも(『どんどん仕掛けろ』と)言われますし、自分はそういった役割を担っています。自分の中でも仕掛けることを常に念頭に置いていますが、自分だけのことを考えるのはよくありません。周囲を見ながらの判断は、まだまだ改善が必要だと思います」
―いまの川崎Fは、鬼木監督も明かしているように三笘選手などが仕掛けて、取られたとしても周りがカバーする態勢をとっています。
「自由にしてくれているのはプレーヤーとしてうれしいことで、そのぶん、やらないといけません。相手を攻略しないと『もう仕掛けちゃダメ』という場面も増えると思うので、成功数にもこだわりたいです」
―成功数にこだわっているんですね。
「攻撃の選手なので、10回中1回、(ドリブルでの仕掛けが)成功してそれがゴールになって勝てればいいという話ですけど、自分はそれでは負けだと考えていますし、全部勝てるようにしたいと思っています」
―代表活動後、例えば脇坂選手も「刺激を受けた。意識が明らかに変わった」と話していました。それは三笘選手も同様ですか。
「刺激は誰しも受けると思います。それは、いい結果であっても悪い結果であっても。その刺激を機に変われるか、継続できるかという部分があって、自分を変えていける。そうした“メラメラ感”をもっと出さないといけないと思いますし、それを維持しないとトッププレーヤーにはなれないと思います」
直接対決で勝てば、大きな意味を持つ
―2位・名古屋との試合が控えます。
「昨季、11連勝目を阻止された相手です。1位と2位の直接対決で勝利すれば、大きな意味を持つと思います。僕自身、昨季のアウェイ戦では何もできなかった印象があるので、ここでしっかりと結果を出して『フロンターレのほうが上だ』というところを見せたいです」
―相手の堅守を崩す上で意識することは?
「サイドを使うしかないと思っています。ミドルシュートで得点できれば一番ですが、そのミドルを何度も見せて相手を間延びさせたり、ボールを保持して後半に相手がキツくなってくるところで仕留められたりできればいいと思います」
―SBとの1対1は重要になる?
「名古屋のCBはゴールエリア付近からなかなか出ないイメージがあるので、そのぶん、僕から見てニアのスペース(ペナルティーエリア内、ゴールの脇)をうまく使って攻略したいと思っています。ボランチが(SBの)カバーもしてくると思うので、そこをうまく突いてもいい。1対1で勝つことができれば、数的優位になってチャンスになります。そこで自分が勝たないと意味がないと思っているので、しっかり準備したいですし、最後のクロスの質、シュートの質というところにもこだわらなければならないと考えています」
―ともに左サイドのドリブラーで、同世代でもある相馬選手の印象は?
「馬力があって、スピードがあります。初速も速いですが、そこから持続してずっと速いタイプです。カットインからのクロスやミドルもあります。以前、僕たちとの試合でもミドルシュートを決めています。全選手をケアしないといけないですが、相馬選手もしっかりとしたケアが必要です」
―この試合で名古屋の守備を破れれば、また評価が上がりそうです。
「失点があれだけ少ないチーム相手に、僕が2点や3点を取れれば、価値が出てくると思います。もちろんチームの勝利が最優先なので、そのためのプレーができればいいと思っています」
取材日:4月22日(木) 聞き手:DAZN、田中 直希
三笘 薫(みとま・かおる)
1997年5月20日生まれ、23歳。神奈川県出身。178cm/71kg。川崎F.U-15→川崎F.U-18→筑波大を経て、昨季川崎Fに加入。J1通算42試合出場17得点。
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(BLOGOLA編集部)
2021/04/28 19:06