キレのあるプレーで全試合先発出場の乾
エイバルに所属する乾貴士は今季ここまでリーグ戦全6試合に先発出場。それは見ていても伝わってくる体のキレを評価されているのだ、と思う。
攻撃面では突破力が格段に上がった。
ボールを受けると間髪入れずドリブルを始め、狭いスペースを1人、2人と抜いて行く。もともとトラップには定評があったが、ピタッと足に収めるや否やダッシュしてボールを運べるようになった。以前はボールを収めて一呼吸置いてからスタートしたり、足を止めてからフェイントやリズムチェンジで抜くこともあったが、今は純粋に瞬発力とスピードで勝負している。それによって、ドリブル突破の勝率が上がったのと同時に、カウンターをスピードダウンすることがなくなった。速く攻め切るというチームのスタイルに、よりマッチしたプレーができているわけだ。
守備面では激しいチェイス、しつこいマークは相変わらず維持できており、その持続時間が長くなった。昨季の良くない時には65分過ぎには運動量やスピードが落ちていたが、今季はそれがない。6試合の間にはチェイスを怠ることもなかったわけではないが、そのたびにメンディリバル監督から怒鳴られて修正。それを見た監督も先発を外さない、という信頼関係が完全に確立している。
ただ、突破後にフリーになってからのクロスやシュートがGKに楽にキャッチされてしまうことが多いのは惜しいし、対角線ドリブルでエリア内へ侵入すべき場面でパスを選択してしまう消極的なところは改善の余地がある。これはメンディリバル監督がずっと修正しようとしている欠点だが、まだ直っていない。練習で入っているシュートが決まらず、強引さが足りないのは、もう一つ自信がないからか。今のキレからしてあまり考えずに勢いで撃った方が入りそうだが……。
武藤は「スペイン語どころかバスク語もすぐにマスターしてしまうぞ」
その乾のお陰で、今季エイバルに加入した武藤嘉紀の適応は早かった。「武藤が有利なのは乾が怒鳴ってくれること」とメンディリバル監督も言っている。「自分のサッカーを一番理解してくれているのは乾」というのがメンディリバル監督の口癖だ。言わば“グラウンド上の監督”から日本語で指示を受けられるのは、新加入の武藤にとって大きい。
加えて、「奴ならスペイン語どころかバスク語もすぐにマスターしてしまうぞ」(メンディリバル)と評された開けっぴろげの性格もプラスに働いているのだろう。スペイン語は単語を知っている程度だというが、武藤はグラウンド上でとにかくよくしゃべる。コミュニケーション能力と語学力は必ずしも比例しない好例だ。
プレー面では、戦える選手であることが大きい。現在、武藤は3試合連続で先発出場を果たしている。
ハイライン&ハイプレスのエイバルではFWはファーストプレスの掛け手でなければならない。追うべきところで相手ボールをきちんと追ってミスを誘発させており、集中力を切らしたり走り惜しんだりすることがない。
また、味方がボールを奪ったら直ちに裏やサイドのスペースへ向かって走ってボールを収めてカウンターの起点にもなれている。頭ですらしたり、胸で落としたりのうまさ、空中戦の勝率の高さは意外だった。攻守の切り替えにロングパスを用いるエイバルでは、ここが拙いと試合に使ってもらえない。
足下にボールを置いて相手DFを背負った状態で当たられても倒れず、収めたボールを誰に預けるかという選択も的確で、長短のパスの精度も高い。結果的に、ボールを奪って一気にカウンターというスタイルの中で違和感がない。
乾が空けたサイドのスペースに武藤が入ってボールをもらい、それをリターンされた乾がドリブルしている間に、武藤はゴール前へ動いてセンタリングを待つ、というコンビもできつつある。2人の絡みでゴールが生まれる“日本ホットライン”完成もそんなに先ではなく、その時に彼らのレベルも一段上がるとみる。
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(BLOGOLA編集部)
2020/10/23 09:46