適応中の久保。攻撃の長所を発揮する以前に
今季ここまでの出場時間は久保建英が6試合すべて途中出場で79分、岡崎慎司が5試合すべて先発で369分。両者のこの差はチームと監督に適応中の久保と1年をかけて適応済みの岡崎の差と言ってよい。
ビジャレアルのエメリ監督は18日のバレンシア戦前の会見で、久保に良くなってもらいたい点として「ポゼッションの安定」、「エリア内でのラストパス」、「フィニッシュ」、「守備」を挙げた。つまり全部である。
そのバレンシア戦で改善されたのは守備。ヒールキックで決勝点のアシストをする直前、味方の右SBの前まで下がって相手の侵入を阻むシーンがあった。1枚目のイエローをもらったシーンでもあの位置まで戻っていたことが重要だった。前節のアトレティコ・マドリー戦、その前のアラベス戦と連続してボールロストしてからボールを追わないシーンがあったので、出場時間が少なくモチベーションが下がっているのかな、と心配していたが、きっちり修正されていた。逃げ切りや勝ち越しの重要な残り5分間や15分間といった時間をプレーするのだから、走り惜しみだけはするな、というのはどんな監督でも思うことだろう。その最低限の要求をクリアして初めて久保得意のドリブル、シュート、アシストらの攻撃の能力が評価される。
攻から守への切り替えが遅く(特に逆サイドでのボールロストに対して)、自分がマークすべき選手に置いて行かれてピンチを招くというマジョルカ時代にもあった欠点が、改善される兆しが見えたのは大きなプラス。反面、2枚目のカードをもらったシーンでも、あのアシストでさえも、トラップミスが引き金になっていたのはマイナスだ。退場によって今季のベストパフォーマンスが帳消しになってしまった。トラップがぶれるのは仲間のパススピードに慣れていないせいか。ポゼッションの安定が次の課題だろう。一進一退ながら、残留が目標のチームと欧州カップ戦でタイトルを狙うチームのレベル差を埋めつつある、とみる。エメリ監督は厳しいが、マジョルカでも加入当初はモレーノ監督も厳しかった。指揮官が厳しいほうが成長できるという部分も少なからずあるだろう。
“小さなベンゼマ”岡崎に置かれる全幅の信頼
一方、久保と違い、岡崎に監督が全幅の信頼を置いていることは、次のミチェルの言葉によく表れている。
「彼はすべてをうまくやる。要求するのはゴールではなく、他の選手をプレーさせチャンスを作ること。サッカーを創り出す彼は非常に重要な存在。われわれは彼がここにいることに感謝しなければならない」
選手にとってこれ以上の賛辞はあるだろうか? センターFWながら得点を要求されず、それよりはるかに大事な“サッカー”を創り出す存在として認められる。失礼ながら私は彼を“小さなベンゼマ”と呼んできた。ベンゼマがいなければレアル・マドリードの攻撃は機能しない。ウエスカにとっての岡崎も同じである。どこでもどんな状況でも最適のプレーができるインテリジェンスあふれる選手なのだ。
9月30日の第4節・アトレティコ・マドリード戦では[4-5-1]の1トップとして前線で孤立しても4バック相手にプレスを掛け続けたが、それだけの精神力の持ち主はなかなかいない。続く3日の第5節・エルチェ戦もそうだった。[4-4-1-1]のトップ下として自由に動きながら、ロングボールを収めて仲間に供給したり、ファウルをもらったりし続けられる者はそう多くいないだろう。
本職の[4-3-3]ではセンターFWとして以上の2つの仕事に加え、ゴール前の密集地帯で自分だけのスペースを見つけてネットを揺らす。左右両足を使えるほか、背は決して高くないのに先にスペースを見つけて動くのでヘディングでの得点も多い。フィジカルに特徴のあるFWやキック力のあるFWはいるが、そこにしかないスペースに飛び込んでワンタッチでボールを流し込める、最少の介入で最大の効果を上げる、そんな気の利いたFWはなかなかいない。
能力を知り尽くした監督の下で能力を全開させる岡崎は、キャリア中で最も充実した時間を過ごしているように見える。
今季は4人の日本人がプレーするラ・リーガ(1部)。今週末の25日には全世界が注目する“伝統の一戦クラシコ”、レアル・マドリードとバルセロナという2大クラブが今季最初の対戦を迎える。WOWOWでは伝統の一戦クラシコ「バルセロナvsレアル・マドリード」を10月24日(土)夜10時から生中継する。その他、日本人選手の試合など毎節最大5試合を生中継!
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(BLOGOLA編集部)
2020/10/21 19:07