シーズンが後半戦に突入してもJ1自動昇格圏の2位をキープと、J2残留争いを繰り広げていた昨季から一転、悲願のJ1復帰へ向けて着実に勝点を積み重ねている今季の京都。ポゼッション重視のパスサッカーがしっかり浸透したチームの中で、最重要プレーヤーとも言える存在がアンカーを務めている庄司悦大だ。
状況によっては最終ラインまで下りてビルドアップを円滑にする役回りのため、今季はゴールに直結する仕事をする場面は少なかった。だが、好調を続けるチームの中でその状況が次第に変わりつつある。J2第24節・岐阜戦でのPK獲得につながったスルーパスや第26節・東京V戦で一美和成のゴールをお膳立てしたアシストなど、本来の持ち味である一本で勝負を決めるようなパスが出る場面が増えてきた。
しかしそのことを指摘しても、庄司は「たまたまですよ」と一笑に付し、「両方ともフリーの場面。フリーならどこへでも(パスを)出せますよ、オレは」とキッパリ言い切る。その言葉には、山口、岐阜時代を含め、J2で勇名を轟かせてきた名パサーとしての矜持が滲む。
そこでふと気になり、「プロのキャリアで自身も納得できる会心のパスはあったか?」を尋ねてみた。すると、「あります、1本だけ。自分でも痺れたパスが」との返答が。
記者も興味をそそられ、そのパスの記憶を手繰ってもらったところ、「山口時代の、ホームの愛媛戦だったかな…。FWにクサビのボールが当たった後にハーフボレーみたいな形でスルーパスを出したんですけど、自分のイメージと完全に一致した軌道で、受け手にも完璧に合って。シュートは鳥養(祐矢)が外したんですけどね(笑)」とのこと。
そして、「自画自賛になっちゃいますけど、『自分以外は誰も蹴れねえんじゃないか』というぐらいのパスでしたね」と胸を張る。
どの試合だったかについては本人も100%の確信が持てていない様子だが、山口が初めてJ2で戦った16年シーズンのゲームであることは間違いないようだ。
3年前の試合、それもゴールにつながった場面でもなく、いま映像でそのパスを特定しようとするとなかなか困難な作業となりそうではある。だが、もし当時の中継の録画が残っている人がいれば、稀代のパサーの“会心の一本”をぜひ探してみてほしい。
(京都担当 川瀬太補)
2019/08/10 00:20