24日、エディオンスタジアムで行われるアウェイ・広島戦は、名古屋の佐藤寿人にとって感慨深いゲームになるのは間違いない。
すでに今季限りの引退を表明し、「長く苦楽をともにした“仲間”という言葉では片づけられない大切な存在」と佐藤が言う広島・森﨑和幸のホーム最終戦が行われるのだ。
同じ年の佐藤と森﨑和の出会いは18歳のとき。ともに年代別の日本代表として日の丸のユニホームに袖を通した。そしてその後プロの世界で戦うようになり、05年、佐藤が広島移籍を決断したのも森﨑和や双子の弟の浩司、駒野友一(福岡)がいたからだった。
「僕が広島にいったときはカズ(森﨑和)がキャプテンで、若かったのにチームをまとめてくれた。そのあともいろんな苦労があった中、常に一緒に戦ってきた」(佐藤)。
07年にはJ2降格という辛酸も舐めた。それでも翌08年は断トツでJ2優勝を成し遂げJ1に返り咲くと、12年には二人とも主力としてJ1優勝という悲願を成し遂げた。
「広島に移籍して最初の優勝をカズと浩司と僕と3人で分かち合えたのは、僕のサッカー人生の中で本当に最高の瞬間でした。その翌日3家族で食事をしました。今まで何度も食事をともにしてきましたけど、本当に特別な、スペシャルな一日でした」
今でも佐藤の携帯電話のスクリーンショットに、優勝を成し遂げた時に撮影された3人の笑顔が大切に保管されている。
その森﨑和幸のプレーヤーとしてのすごさを佐藤はこう見ている。
「基本的なプレーがパーフェクト。派手さはないが目に見えないところでチームを助けてくれる。一番すごいと思うのは駆け引き。パスコースをわざと開けておいて、相手にそこにパスを出させて奪うというのはカズにしかできない専売特許。いろいろな選手と対戦してきたけど、駆け引きでカズを上回る選手はいないですね」
そんな森﨑和幸と対戦できるのはあと1試合になる。
「広島で生まれ育って、いろいろなプレッシャーを背負って地元でプレーしてきた。なかなかいまのサッカー界では“ワンクラブマン”は難しいけど、一つのクラブでやりとおして、その中で広島という決して大きくはない規模のクラブを3度の優勝に導いた。これは本当に大きな功績だと思います。できればカズを継ぐ選手が広島の中で生まれてほしい。引退するのは寂しいけど、選手として一緒にサッカーをすることはなくなるというだけで、また違った形でカズと一緒の時間を共有できると思っているので、何かカズの手助けができたらと思います」
24日、森﨑和幸ホームラストマッチ。佐藤寿人のいる名古屋が対戦相手というのも何かの因縁だろう。最後のホイッスルが鳴った瞬間の二人の様子を見届けてほしい。
(名古屋担当 斎藤孝一)
2018/11/21 08:37