前節の讃岐戦で貴重な同点ゴールを決めた福岡の鈴木惇。ペナルティーアーク内中央やや右寄りの位置でのFKを得意の左足で直接沈めた。FKを直接決めたのは今季3度目。第9節の山口戦、第16節の水戸戦に続くもので、鈴木がFKを決めたその3試合はいずれも勝利を収めている。
福岡の場合、FKの際にセットされたボールの後ろに立つのは鈴木と駒野友一というパターンがほとんど。二人の間でどんな会話がかわされているのか。
「この前の讃岐戦も含めて、距離、位置、相手の壁の高さなどを踏まえて、僕とコマさんのどちらが蹴れば得点の確率が上がるのかを話し合って、キッカーを決めています。この前は、コマさんが『ジュンの方がいいんじゃない?』と言って譲ってくれました」
FKの場面ではよく、自分が蹴りたいと手を挙げる選手が数人いるために『なんだか微妙な空気が漂っているなぁ』と周囲も感じるくらいに、あまりよろしくない雰囲気になる。プロとして決して悪いことではないが、そこに強い自己主張があるからそうなる。
しかし、鈴木と駒野の場合、基本的には冷静な話し合いをベースにした譲り合いの気持ちがあるから、そこに流れる空気は穏やか。もちろん、鈴木のキック精度が高いことがベースにあるとして、鈴木がここまで3本のFKを決めているのは、穏やかな空気の中でキックに集中できるからでもあるのだろう。
抜群のキック精度を誇るキックの職人二人がつくりだすのは、穏やかだけれども、不可侵の世界。残りのシーズン、二人がつくりだす特別な空間から特別なゴールが、まだまだ生まれそうな気がする。
(福岡担当 島田徹)
2018/07/17 18:26