町田の中島裕希にはやり残したことがある。
15シーズン限りで山形を退団し、町田に加入した中島は、昨季J2第7節でかつてのホームスタジアムであるNDソフトスタジアム山形のピッチに立ち、チームは1-0で勝利。試合後、4年間お世話になった山形サポーターの下に行き、再会の喜びと感謝の思いを伝えるはずだった。
しかし、当時の山形は町田戦の敗戦で開幕からの未勝利数が7試合に伸びてしまい、試合後の山形ゴール裏はブーイングに包まれた。さすがにその雰囲気の中を、中島が山形サポーターの下まで行くわけにはいかず、中島自身の思いは果たせなかった。
「今季は行こうと思っています」
12年から在籍した山形では、14年にJ1昇格プレーオフを勝ち抜き、劇的なJ1昇格を勝ち取った。そのときの興奮はいまでも忘れていない。さらに「山形の人たちの温かさが好きだった。山形には特別な思い入れがある」。山形を離れたいまでも、かつて在籍したチームに対しては特別な感情を抱いている。
しかし、“何も持たず”に山形サポーターの下に行くわけにはいかない。かつての在籍チームに申しわけない気持ちを多少抱きつつも、勝負となれば話は別。プロサッカー選手の一人として、理想は自らゴールを決めて、町田が勝利を収めた状況で挨拶に行くことだ。
7月1日のJ2第21節・山形戦。「前半戦の最後を勝って後半戦を迎えたい」(中島)。
自身の願いを叶えるために、中島はかつての庭へと乗り込む。
(町田担当 郡司聡)
2017/06/29 07:00