6月21日の天皇杯2回戦、宮崎産業経営大との一戦を振り返った中原貴之の言う「うれしさ」には、さまざま意味が込められていた。
2016年のJ1リーグ1st第11節・仙台戦(6月8日)以来となる公式戦出場を果たしたこと。その復帰戦で2015年のJ2第32節・札幌戦(9月20日)以来のゴールを挙げたこと。
そして3歳になる息子にピッチでプレーするパパの姿を見せられたこと。さらに「左ひざの手術を神戸で受けたので(2016年6月17日)子供がいる福岡との往復をしなければならなかったし、術後しばらく僕は歩くこともできなかったので身の回りの世話も大変だったと思う。また、リハビリ中は僕以上のストレスがかかっていたはず。だから一番喜んでくれたんじゃないかな」と言う奥さんの笑顔を見ることができたこと。
何より「復帰までにあまりにも長い時間が経ったので、自分の元のパフォーマンスがどんなものだったかを忘れてしまって、さぐりさぐりの状態で一日一日を過ごしてきた」という五里霧中の状況から脱する光を五感で感じられたことがうれしかったのではないか。
「ゴールよりも試合に出られたことがうれしかった。けがをしたことはつらかったが、試合に出られるうれしさ、そういう新鮮な気持ちをもう一度持てたことは良かったのかなと思う」
ただし、闇から抜け出した“タカ”の目から安堵の色はすでに消え、貪欲な炎が灯る。
「1点だけでは物足りない。この天皇杯でのゴールをリーグ戦でのゴールにつなげたい」
写真:島田徹
(福岡担当 島田徹)
2017/06/23 19:17