著者:水谷 尚人(みずたに・なおひと)/著者:池田 タツ(いけだ・たつ)
発行:3月4日/出版社:産業能率大学出版部/価格:1,200円(本体価格)/ページ:229P
破顔の社長に率いられた湘南のネクストステップに注目せよ
巻末の縦3cm横2cmのスペースには飛び出してきそうなほど豪快な笑顔の写真が収まっている。
『たのしめてるか。~湘南ベルマーレ2016フロントの戦い~』は、15年12月から株式会社湘南ベルマーレの代表取締役社長に就任した著者・水谷尚人を中心とする、クラブスタッフの奮闘記だ。読み進めた最後に社員24名の顔写真が出てくる演出にはグッとくるものがあるが、その中でも特に最高の笑顔を見せているのが水谷社長である。
02年、さまざまな縁が重なって湘南の強化部長に就任し、クラブ運営を手伝い始めた水谷は、04年にその職を後任に引き継ぐと、05年に『湘南ベルマーレソフトボールチーム』、06年にパラグアイの『日系ベルマーレ』、07年に『湘南ベルマーレフットサルクラブ』を次々と立ち上げた。そのバイタリティーが、巻末の笑顔によく表れている。最高の笑顔は前向きな人の顔にしか生まれないものだ。本書を通じて描かれている水谷の前向きな姿勢、そしてその水谷に率いられた湘南のフロントスタッフのチャレンジスピリットは、この春、新たな挑戦の必要に迫られている、あるいは新たな挑戦をしようと思っているのになかなか一歩を踏み出すことができない人にとって、ポジティブな刺激になるだろう。なぜ水谷が笑顔を絶やさないのか。その理由も本書で明らかにされている。
水谷は、10年1月に株式会社湘南ベルマーレの取締役に就任し任期満了まで務めると、13年からはNPO法人湘南ベルマーレスポーツクラブの理事長の座に就いていた。その間クラブ経営から少し離れていたため、社長就任の1シーズン目、16年の途中で、自分の中に「パラダイムシフト」が起きたことを、自省とともに本書に記している。「それまでは以前のような毎月の支払いや資金繰りに追われるような意識を持っていたが、そのレベルから(クラブが)脱却したと、遅まきながらわかった」。16年はJ2降格の憂き目を見たが、17年以降に向けて、水谷は最後にこう宣言する。「勝つために私ができることに取り組んでいく」。
17年3月28日現在、4勝1分でJ2首位。破顔の社長に率いられた湘南のネクストステップに注目しないわけにはいかない。
(BLOGOLA編集部)
2017/04/09 12:00