U-17W杯への出場を決めたU-16日本代表が9月31日、AFC U-16選手権が行われていたインドから帰国した。準々決勝でUAEに1-0で勝利しW杯への切符を勝ち獲ったものの、準決勝でイラクに2-4と敗れたU-16代表。バルセロナの下部組織出身で、18歳でバルサ復帰が内定している久保建英(FC東京U-18)は、今大会に1学年飛び級で参戦し、4ゴールを挙げる活躍を見せた。
劣悪な環境の中、約2週間の戦いを終えて帰国の途についた若き日本代表。成田空港に到着した久保も、疲労の残る表情をしていた。
W杯出場を懸けたUAE戦では先発し、チームの勝利に貢献。しかしその一戦で右足を負傷し、イラク戦はベンチスタート。ビハインドの展開で途中出場するも、最後はチームの力になれなかった。
「イラク戦は途中から出場して、チームも苦しい時間帯だった。勝てなくて悔しかった」
このチームでは周囲の選手より1歳若い久保だが、その能力の高さはやはり折り紙つき。ピッチ条件が悪い中でも、テクニックを生かしたプレーでゴールも奪った。
今回、チームには西野朗・日本サッカー協会技術委員長が帯同。かつてアトランタ五輪やG大阪の監督時代に指導した前園真聖や中田英寿、遠藤保仁といった能力の高い代表レベルの選手たちと久保を比較し、こう語った。
「フィジカルレベルは年齢的にもまだまだだが、総合力では彼らに匹敵する。上の世代のレベルにも入っていける。久保は戦術・技術だけでなく、それを引き出すメンタルレベルが世界基準にある。今回、長い期間一緒に過ごす中で、一日一日の態度やチームへの姿勢も高いレベルで考えて行動していると感じた」
しかし、久保本人はさらなる成長を促された大会だったと語る。
「負けたイラク戦で感じたことは、例えば相手の7番の選手(ダウード)は個人で打開できていた。自分は個での打開力がまだまだ足りない。日本は組織だったら世界でも通用するかもしれないけど、一人ひとりが個を伸ばしていけばもう一回り大きなチームになれる。ここでチームは一度解散になるけど、来年の(U-17)W杯まで個を磨いて集まれればいい」
イラク相手に突きつけられたのは、パワー、フィジカルで上回る相手に屈するという、日本サッカー全世代で共通する課題だった。バルサも惚れ込む高いテクニックを保持する久保も、世界で戦う上で「パワーがある相手にもしっかり個で勝負できる選手にならないと」と、自分に言い聞かせるように繰り返していた。
所属するFC東京ではトップチームのリーグ戦に出場可能な2種登録が完了。J3に参戦するFC東京U-23の試合に出場する日も近いと言われている。「まずはユースでも試合に出られるように。(Jデビューは)それからだと思います」と最後まで殊勝な態度を貫いた久保。日本の未来のエース候補は、さらに自分を磨いて世界で勝負することを誓った。
(FC東京担当 西川結城)
2016/10/01 11:53