著者:大塚 一樹(おおつか・かずき)
発行:6月22日/出版社:ソル・メディア/価格:1,600円(本体価格)/ページ:240P
5人のプロ目線による観戦法。あなたの“見方”は?
これほどまでにさまざまな角度からサッカーの“見方”を考察した本が今までにあっただろうか。
本書では川崎Fに所属する中村憲剛、Jリーグでの監督経験が豊富な城福浩氏、いわきFC代表取締役の大倉智氏、サッカーアナリストの白井裕之氏、イビチャ・オシム元日本代表監督の通訳を務め、現在は秋田の監督を務める間瀬秀一氏という、分野は異なるがそれぞれの形でサッカーに携わる5人のプロの“目線”からサッカーの“見方”や“観戦の仕方”を紐解き、提示している。
現役選手、監督、クラブ経営者、アナリスト、監督・通訳と、「サッカーを観る」と一口に言っても、その見方はそれぞれ違う。中でも面白いのは経営者の視点でサッカーを観ている大倉氏の話だ。
元・湘南代表取締役社長でプロセス主義の大倉氏は「試合を観る際に一貫している基準は面白いか、面白くないかだけ」と話し、「お客さんが沸くシーン=面白いシーン」と断言。さらに、「選手たちと同じ目線で観たいから」という理由で、ピッチレベルで試合を観ることにしているという。そして、その視線の先にはチームの勝ち負けにこだわらず、サッカーという“商品”の魅力を、お客さんや世の中という“消費者”にどう伝え、どうリーグを盛り上げていくかを日々考える男の熱い思いがある。
インターネットが急速に発達し、四六時中どこにいてもサッカーの情報を手にすることができるようになった現代では、パソコンやスマートフォンなどで好きなときにサッカーの試合が見られるようになっている。
しかし、本当にそれでサッカーを見ていると言えるのだろうか。スタジアムに足を運び、生で試合を観戦することでしか得ることのできないものはたくさんあるはずだ。サッカーの試合を生で一度も観たことのない人はもちろん、最近サッカーを観ることにワクワクできない“倦怠期”の人たちにこの本を手に取ってもらいたい。そしてこれを片手にスタジアムに赴き、自分なりのサッカーの“見方”を探求してみてはいかがだろうか。
(柏担当 須賀大輔)
2016/10/02 12:00