著者:高部 務(たかべ・つとむ)
発行:8月8日/出版社:静岡新聞社/価格:1,600円(本体価格)/ページ:373P
日本サッカー発展のヒントは『サッカー王国・静岡』にあり
『サッカー王国・静岡』、『サッカーの町・清水』。この言葉を聞いていまの子供は「なぜ」と思うかもしれない。Jリーグでは清水と磐田がJ2降格を経験し、高校選手権でも20年以上静岡県から優勝校が生まれていない。日本代表にも現在、静岡県出身者はMF長谷部誠とMF大島僚太のみ。いまの子供が『サッカー王国』、『サッカーの町』と聞いて違和感を覚えるのは無理もない。
ただ、本書はそんな子にこそ読んでほしいし、なぜ静岡が『サッカー王国』、清水が『サッカーの町』と呼ばれているのか実はあまりよく知らないという人にも読んでほしい。本書は清水のサッカーのために情熱と心血を注いださまざまな人物を丁寧に描くことで、その理由を解き明かしてくれる。静岡県出身の筆者でも、「そうだったのか」という発見が多かった。
そして、本書は日本サッカーのレベルアップのヒントも教えてくれている気がする。82年、日本サッカー界にこんな出来事が起こった。JFAが公認する6種すべてで静岡県のチームが優勝したのだ。天皇杯ではヤマハ発動機が、皇后杯では清水第八スポーツクラブが、国体の少年の部では静岡県選抜が、高校選手権では清水東高が、全国中学生大会では観山中が、全日本少年大会では清水FCが優勝を成し遂げた。静岡が『サッカー王国』と呼ばれる所以となった出来事だ。それは決して偶然ではなく、その強さの根源は少年、少女のサッカーの普及だった。
日本サッカーはいままさに岐路に立たされている。ブラジルW杯でも、リオ五輪でも世界との差は明らかだった。これに危機感を抱いたJFAは育成年代の世界大会を国内で開催するなどさまざまな施策を打ち出し、強化に動いている。ただ、JFAだけでは限界がある。町が、地域が積極的に少年、少女のサッカーの育成に力を入れていかなければ日本サッカーの発展はないだろう。そのことを本書が教えてくれている。
(BLOGOLA編集部)
2016/09/18 12:00