昨年の8月29日に行われた天皇杯1回戦C大阪対FC大阪で腎臓破裂などの生死に関わるけがを負った長崎の永井龍(当時C大阪)が、負傷から1年が経った今の心境と、天皇杯への思いを語った。
「この1年、早かったな」。それが永井が最初に感じる率直な気持ちだという。そう思うのは2~3ヶ月入院していたせいなのかは自分でも分からない。入院しているときは辛さもあったが、生きるか死ぬかという状況を経て、今こうしてサッカーができる状況を幸せだと感じている。意外にも永井本人は、1年前の怪我をしたシーンについて特別に激しく当たったという印象は持っていない。「入り所が悪かった」というのが率直な感想だ。実際に、接触プレー後も永井は出場を続けて、74分にはチーム唯一の得点をあげている。だが、このときすでに、彼の左腎臓は損傷しており、試合後は病院へ直行することとなった。医者から命にかかわるけがだと聞いたのは後のことである。
その後の復帰から、移籍、入籍、J2得点王争い…と、公私ともに目まぐるしい日々を送ってきた永井が、1年前の試合を振り返って思うのは、受けて立つ戦いの難しさだという。「同じ大阪のチームということで、FC大阪のモチベーションが高くて、2失点目をした時、相手がますます勢いにのって球際にもガンガンくるようになった」。1年前の試合は、永井にとって、強い意識や勢いが、圧倒的な戦力差を覆すこともあることを思い知らされた試合でもあったのだ。
今年も天皇杯を戦う永井に、大会の位置付けを聞いてみた。「昔は天皇杯に大きなウェイトを持っていなかったんですが、あの日以来、気持ちが変わって特別な大会になりました。そして、難しい試合なんだなってあらためて思います」。同時に、今年の天皇杯にはもう一つ楽しみがあるという。それは順当に勝ち進めれば、天皇杯の3回戦で、かつての同期である扇原貴宏がいる名古屋グランパスと対戦できること。「やりたいですね、扇原と。」そう言って笑う永井は、昨年の8月29日に敗戦と、けがで終わった天皇杯の続きを、誰よりも楽しみにしているようだった。
写真:藤原裕久
(長崎担当 藤原裕久)
2016/08/26 19:15