著者:岡崎 慎司(おかざき・しんじ)
発行:6月8日/出版社:KKベストセラーズ/価格:780円(本体価格)/ページ:256P
サッカーファン必読。奇跡の優勝。その“苦悩の1年”
「岡崎慎司はどんなプレーヤーか?」と問われて皆さんはどう答えるだろう。「献身的で泥臭いプレーも厭わないFW」と答えるか、「多くのゴールを奪うストライカー」と答えるか。おそらく大半の人は前者ではないだろうか。レスターをイングランド・プレミアリーグ初優勝に導いたクラウディオ・ラニエリ監督も「誰より早く相手の攻撃を防いでくれる」と岡崎の献身性を褒め称えている。
それもそのはずだ。今季、岡崎がリーグ戦で奪ったゴールは5つ。第30節・ニューカッスル戦のオーバーヘッドでの決勝点など貴重な得点はあったが、チームメートのイングランド代表FWジェイミー・バーディー(24得点)やアルジェリア代表MFリヤド・マフレズ(17得点)に比べるとかなり少ない。“点取り屋”と称するには寂しい数字だ。
ただ、われわれ日本人はこう思う。「岡崎の献身性なくして、バーディーやマフレズはこれだけ点が取れなかっただろうし、レスターの優勝もなかった」と。身を粉にして戦う姿は同じ日本人として誇らしかった。しかし、岡崎自身はそうした評価に納得していない。「『陰で支えた』という評価はありがたい。ただ、僕が目指しているところはそんなポジションではない」。レスター優勝への賛辞は、自分への賛辞ではないことに岡崎は気付いていた。それがこの『未到』というタイトルにつながる。
本書は世界最高峰のプレミアリーグに初挑戦した岡崎の優勝までの“歓喜の1年”ではなく、“苦悩の1年”を振り返ったものである。初優勝の歓喜に湧く中で岡崎は悩み、もがいていた。そして世界最高峰の舞台に立つことで考え方が変わっていく。優勝までの感動ストーリーを期待して読むと面食らうのでご注意を。ただ、バーディーが試合前にエナジードリンクを立て続けに4本飲んでいることやラニエリ監督のチーム掌握術など、レスター優勝の舞台裏を岡崎自身が明かしており、サッカー好きなら必読の一冊となっている。
(BLOGOLA編集部)
2016/08/08 12:08