16日に今季限りでの引退を表明し、17日に引退会見に臨んだ中村直志。
「サッカーはチームスポーツですし、自分のエゴだけでは成り立たないスポーツです」
文字にするとありふれた言葉だったかもしれない。でも、それでも中村が言うから、重みがあった。一つのクラブで14年間、いつ何時も、自分のできることに100%の力を注いだ背番号7。「言って引っ張るよりは、やって背中で引っ張っていく。それを本当に実践してきた選手」(西野朗監督)が言うから、誰しもの心にしみわたった。クラブが発表した会見の模様。冒頭の言葉はその一言に過ぎないが、ミスター・グランパスの実直な言葉の数々に、FacebookやTwitterなどを通じたファンやサポーターからの反響はものすごかったという。
19日。2日が経過したこの日も(20日は非公開)、多くのファンやサポーターが中村への惜別の挨拶に訪れており、ファンサービス中には涙をこぼす人も。これを見た中村は「さっき泣かれちゃいました…。本当に、本当にありがたいことです」と心の底から感謝の言葉を綴っていた。
そして、この日から練習にも復帰している。今節・清水戦での出場は指揮官の判断次第となるが、負傷箇所に不安はないという。記者陣から「最後にまたあのミドルが見たいです」と投げかけられると、「そうですよね。残り3試合、チャンスがあれば狙っていきたいと思います」と笑顔。
プロ生活14年。関わったすべての監督に信頼を置かれてきた、「玄人、職人肌」(西野監督)で、「誰かを光らせるため、水を運べる(リーグでも)数少ない選手のうちの一人」(同監督)。そんな背番号7が、時に輝きを放つ瞬間――。多くの人を何度も魅了してきた十八番のスーパーミドルを、その最高のストーリーを、誰もが待っているに違いない。
(名古屋担当 村本裕太)
2014/11/21 07:00