夢の中で誰かをブン殴ろうとして、思うように腕が動かず歯がゆい思いをした経験ってありませんか?
第25節岐阜戦の序盤は、そんな夢を見ているようでした。あるいは水中を歩くようなまったり感。意志のままに体が動かないもどかしさ。寄せるスピードの欠如感と、パスやトラップでのミスの連続。敵の新戦力・アブダ選手の自由な動きに手を焼いたとはいえ、それ以前に精彩を欠いて見えた、あの感じ。
原因は安易には特定できませんが、やはり大銀ドームの芝の問題も関係しているような気がします。九州北部豪雨を含むここ数週間の大雨と、通気性のよくないスタジアムの構造が作用して、特にこのホーム連戦のピッチはひどいものでした。芝は、まだらにはがれてぬかるみ、走っただけでスパイクに泥がこびりつきます。田坂監督の言葉を借りればまさに「田んぼ」状態。
踏み込むとき軸足には体重の何倍もの負荷が掛かります。そのとき地面がぬかるんでいたら、さらにイレギュラーな力が加わる。選手たちは「対戦相手も同じ条件だから言い訳にはならない」と言いますが、長い視点で見れば悪いピッチでプレーする頻度が高いほど疲労は蓄積しやすいでしょう。また、同じ90分間のプレーでも、ショートパスをつなぐスタイルでは、手数をかけずに長いボールを入れるスタイルよりも、負荷の掛かる回数は多くなります。
第24節湘南戦の後、足首を痛めて別メニュー調整が続いていた森島康仁選手。彼のサイドチェンジはチームの重要な武器ですが、キック一発でサイドを変えるには相当の筋力が必要だし、足への負荷も大きい。09年に彼が疲労骨折で長期離脱したときも、スタジアムの芝はボロボロでした。
試合後の会見で田坂監督は「サッカーの内容を見直さなくてはならない」と悔しさをにじませました。「アウェイよりもホームで戦う方が疲労度が高い。サッカー以外の敵がいる状態」。ここ数試合でボールを受ける位置がよくなり、先週の練習ではそこからの崩しのパターンをチームの約束事としていくつか設定しました。ここまで辛抱強く育ててきたスタイルに手応えを感じつつあった直後のことで、見ているこちらも無念です。
第26、27節はアウェイ連戦。ようやく梅雨も明けました。どうかこの期間に少しでも芝が育ってくれますように。サッカーが好きで集まってくるひとたちに、面白いサッカーを見てもらうためにも。そしてこのあと大分は、どのように変わっていくのか。きっと田坂監督のことだから、アグレッシブなコンセプトはそのままに、新たなスタイルを築いてくれると期待しています。
(大分担当 ひぐらしひなつ)
2012/07/25 17:43