圧倒的制覇――。今季Jリーグ史上最速の記録でリーグ優勝を決めた川崎フロンターレ。シーズン中に10連勝、12連勝と二度も大型連勝を記録したクラブ自体が初めてで、さらに過去最多勝点、最多得点記録も樹立。まさに記録づくしの“強さ”を誇った。
そんな超攻撃集団を最終ラインから下支えしたのが、リーグ屈指の明敏DF谷口彰悟。クレバーな守備には元々定評があったが、圧倒的制覇の影である進化を遂げていた。今回は谷口本人が、その自身の進化について語る。
※このインタビューは新型コロナウイルス対策のため、リモート取材で行われました
――あらためまして今季J1制覇おめでとうございます。17年、18年に川崎フロンターレが連覇したときと違い、今回はチームキャプテンとしての初優勝にもなりました。
「もちろんキャプテンとして挑んだシーズンで優勝できたこと自体はうれしいです。でも、一番重要なのはそこではなかったですね。やっぱり優勝の仕方が今季は特別でした。序盤早々に首位に立ってから、そのあとずっと陥落せずに優勝することができました。常にリーグをけん引していく存在になることを目指してこれまでもやってきました。追われる立場でずっとシーズンを過ごしていくというのはもちろんプレッシャーもありましたし、難しさもありました。過去2回の優勝は上位に追いついてとか、終盤戦で逆転しての制覇という形でしたが、今回のようにこれだけ首位に立ち続けたままの優勝は初めてでした。そこの達成感が過去2回とはまったく違いますし、チームの成長度合いを感じられるシーズンでした」
――あるインタビューで谷口選手が今季を振り返る際に、「チームが毎試合2点、3点と取りに行く姿勢だったので、DFとしては逆に守備へのプレッシャーが大きかった」と話していたのが印象的でした。
「僕も初めからチームのスタンスとしてゴールをたくさん奪いたいということは分かっていました。ただ、試合運びとして、普通であれば例えば先制点を取ると相手は追いつかないといけないので前掛かりに来ますよね。こちらはそこでうまく守備のブロックを組んでいながら追加点、ダメ押しの3点目を狙うという流れがセオリーだとは思います。ただ今季のフロンターレに関しては、立ち上がりからアグレッシブに点を取りに行って、その後も相手の出方を見るのではなくさらに畳み掛けてゴールを奪いに行きました。それを90分間ずっと繰り返す戦い方でした。もちろん今季は5人を交代できるレギュレーションも関係していましたが、DFとして最初はすごく戸惑いがありました。自陣で守備的に試合をコントロールするようなリスクマネジメントを考えるのではなく、前に前に畳み掛けるわけですから。ただ、この姿勢がどんな相手もすごく嫌だったでしょうし、自分たちも常に攻撃的に行くというマインドを1試合通して可能にする選手たちが揃っていました。下手に守りに入るより、ガンガン攻めて行ったほうが勝つ可能性が大きくなる感覚を、シーズンの途中でつかみました。個人的にもその思考の変化ができたことは大きかったです」
――ただ、守る側としては現実的にリスクもあるスタンスだったとは思います。
「まずはDF陣がその攻撃マインドになれたことは良かったんですが、後ろの選手としては確かにキツい場面もありました。『ここはゆっくり攻めていこうよ』と思うときも、前はガンガン縦に行きますからね(笑)。それでもその姿勢を生かして点を取ってくれることが多かったので、そこで僕らももう一度ラインを上げて相手を押し込んで、ハーフコートゲームのようにして攻めながら時間を経過させていくというイメージでした。守りながらも常に攻める姿勢や志向を持っていましたね」
――DFとしては四の五の言わずに『1対1』で止められるか否か、みたいな場面は避けて通れなかったところもあったでしょう。
「今季は([4-2-3-1]から[4-3-3]に)システムも変わったことで、おのずと個人の守備範囲は広くなりましたね。カバーリングする距離も長くなりましたし、『1対1』や相手と数的同数のようなシチュエーションで守ることはずっとやってきました。そこを恐れてはいけないな、と思っていましたね。当然、リスクはあります。FWとDFが『1対1』の状況になるというのは危険な場面ではありますが、結局『1対1』で勝てば問題はないわけです。そこはシンプルに相手を止めるだけでなく、駆け引き勝負も含めてです。いい形でボールを相手に入れさせなければ奪える場合もあります。局面で相手にさらされても、うまく止める。そんな場面を想定した練習は今季常にやってきましたので、怖がらないようにしていました。『1対1』を怖がらない、逆に止めてやるという意識をDFが持っていないと、今季のフロンターレのサッカーは成り立たなかったかもしれないですね」
――思えば、FCバルセロナの全盛時代もまさに今季のフロンターレのような終始攻撃スタンスを貫く戦い方でしたが、後ろではセンターバックのジェラール・ピケ(スペイン代表)らが数的同数でも守りきっていましたよね。
「そうですよね。数的同数どころか、不利な状況で守る場面もあるぐらいです。ただ、最終的に危険な位置にいる相手にボールが渡らなければOKなわけです。その場合はパスの出どころをつぶしてしまうこともできますし、受動的に守るのではなく、前で能動的に止めに行くというような姿勢が大切です。すると、多少背中(自陣ゴール寄り)に相手の選手を置いていても、前で止めることを迷いなく行えば完結できることも多々あります。もしそこで相手にひっくり返されてカウンターを食らってしまえば、そこは全員全力で戻るのみ。はっきりしていますよね。その姿勢を迷いなく、共通理解を持ってできれば、『1対1』も怖くないという考え方になります」
――サッカーにおける究極の局面対決である『1対1』、その概念が谷口選手のなかで変わったシーズンだったんですね。
「そうですね。『1対1』で止めきる、やられないことを目指すのは前提ですが、逆に言えば『1対1』の状況でも駆け引きをして、パスを出させた次のところで止めるとか、そのあたりのところまで意識して守れるようになってきましたね。駆け引きの時点で優位だと思えば、思い切り前に出てインターセプトも狙う。『1対1』でも強気に守っていくという部分は本当に今季鍛えられたと思っています」
――さて、ここまで『1対1』の話をしていただきましたが、今回谷口選手も実際にプレーした『TSUBASA+』という位置情報ゲームアプリは、実際に街に繰り出してバーチャルな世界でも『1対1』ができます。ちなみに『キャプテン翼』でお気に入りの登場人物はいますか?
「個人的には石崎くんが結構好きでした。よく周りからは『同じDFでも全然プレースタイルやタイプが違うでしょ』と言われるんですが(笑)、でも、だから好きなのかもしれないですね。顔面ブロックとか、大事な場面でああいう守り方をするのは見ていても熱くなります。あとこれは皆さんも好きでしょうが、日向小次郎くんは昔子供の頃にやっていたゲームでも使っていましたね」
――実際に、現在『TSUBASA+』をプレーされてみての感想はいかがですか?
「シチュエーションがリアルなストリートサッカーみたいで、日本全国、世界のいろんな場所でできるというのがまずすごく面白いと思いました。いろんな街中に『1対1』のスペースがあって、そこで実際に対戦する。サッカーゲームではいままでありそうでなかったシチュエーションのゲームだなと感じました。ほかにも、これまでのサッカーゲームはチーム同士の対戦が当たり前でしたが、『TSUBASA+』はサッカーの醍醐味でもある『1対1』の勝負というところにフォーカスしていて楽しいところですね。このアイディアはすごいなと思いました。ゲームの対決の始まり方も、背中合わせでボールを挟んでからスタートしますが、あれはよく僕も小学生時代に友達と実際にやっていました(笑)。ピッと笛がなったら、クルッと回ってボールを落として『1対1』がスタートする。懐かしいです(笑)。こうして気軽に『1対1』の対決をゲーム感覚で楽しめることで、ぜひ実際にサッカーをやっている方々はもちろん、ボールを蹴ったことがない方々も真剣勝負を体感してもらいたいです」
(実際に『TSUBASA+』をプレーする谷口選手)
【インタビュー後編(12月25日掲載予定)に続く】
インタビュー後編では、谷口選手にとっての『1対1』のこだわりを深堀りします。またチームメイトの川崎フロンターレの選手や、過去に対戦してきた選手で『1対1』が手強かったプレーヤーを選出。そして、いま大注目のドリブラー・三笘薫選手のプレーを谷口選手がDF目線で“言語化”します。お楽しみに!
【スマホアプリ用ゲーム『TSUBASA+』】
『キャプテン翼』のキャラクターに加え、リオネル・メッシを始めとする世界各国のスーパースター選手や明治安田J1~J3リーグの選手が実名で登場し、街中で『1対1』のバトルができる位置情報ゲームアプリ。ゲーム内の街には数々のスタジアムがあり、そこで選んだ対戦相手とバトル。『1対1』に勝負すれば“マイフレンド”として次から同じチームで戦う仲間になる機能もある。もちろん数々の選手を登録し、収集していくこともゲームの醍醐味だ。
また自分が使うキャラクターは顔や髪型に髪色、衣装などを選択することができる。さらに対決に勝利していくことでプレイヤーランクが上がり、バトルで使用できる必殺技も増加。大空翼くんのドライブシュートや日向小次郎くんのタイガーショットなども登場する。
公式サイトはこちら⏬
https://tsubasa.plus/ja/
(BLOGOLA編集部)
2020/12/19 11:00