東京Vでいま一番旬な選手といえば、インサイドハーフとしてここまで全試合スタメン出場を続けている渡辺皓太だ。前節の大宮戦では先制ゴールをアシストしたほか、守備に攻撃に大車輪の活躍で本紙選定マン・オブ・ザ・マッチに。昨季は1ゴール0アシストだった記録も、今年はすでに2ゴール8アシスト。来週から行われるアジア大会に出場する、U-21日本代表に選出されたのも文句なしといえる。
しかし本人は自身の活躍については口が重く、前節の試合後も「いや、別に」「まだまだです」と繰り返した。そこであらためて今週、渡辺に聞いた。ゴールこそなかったが、中盤でボールを奪って、攻撃ではチャンスをいくつも作った。自分のプレーのどこが不満なのか、と。すると開口一番、「仕事量が少ない」という。
「ポイント、ポイントでいいプレーというのはちょっとずつできているかもしれないけれど、90分間とおしてそれができないとまだまだダメかなと思います。消える時間がないようにしていきたい」
ユース時代はトップ下としてプレーした彼にとって、「全部できるようになる」というのが理想であるらしい。「守備もやって、ゲームを作って、ラストパスも出せて、ゴールも決める」と。108m×68mのピッチで11人対11人が行う競技において、それもヨハン・クライフやベッケンバウアーの時代ならともかくピッチ上の分業が進む現代サッカーにおいて、何とも高い理想を掲げたものである。
そんな愛弟子についてロティーナ監督は、「去年から大きく成長した。今季はより相手にダメージを与えるプレーができるようになっている」と評価する。彼の最も大きな資質は、「中盤で守備ができ、攻撃も高いレベルでこなせる」ことだいう。ならば彼が理想とするプレーヤーに近づく可能性は?
「すべての能力を伸ばすこと、すべての局面で向上したいというのは、難しいかもしれないがトレーニングによって可能だと思います。そのリミットはありません」
しかし現代サッカーにそんなポジションは存在するのでしょうか?
「セントラルハーフであれば可能ですね。攻撃でも守備でも、あらゆる局面で仲間を助ける。そういう働きをする選手をスペイン語で『amigo de todos』(全員の友達)と言います」
現在、チームでこなしているインサイドハーフでは戦術上の制約が多いが、もっとザックリとしたボランチの位置ならばアリということか。実際、昨季の終盤から基本フォーメーションが中盤3枚の[4-3-3]になるまではダブルボランチの一角としてプレーしていた。
そこで注目されるのがアジア大会。森保一監督の[3-4-2-1]の中で、渡辺が起用されるとすればシャドーかボランチと予想される。ぜひ“みんなの友達”として走り回る姿を見たいものだ。
(東京V担当 芥川和久)
2018/08/09 17:13